滝井椎野

TAR/ターの滝井椎野のレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.8
この結末は墜ちた末の絶望なのか、はたまた堕ちた先で見つけた希望なのか。
観る人間によって感じ方は変わるだろうが、個人的には後者であって欲しい。

これはなかなか難解。
上手く言葉に出来ないが、物語の要所要所で敢えて大切な部分が削られているようなチグハグさのある作品だった。
違和感が続き、リディアが演奏に乱入する場面で漸くその狂気が露わになる演出は見事。
そこでのケイト・ブランシェットの演技ときたら……人相までがまるっきり変わっているのが凄い。

ちょっとした違和感を描いて作品の狂気を演出する作品は多くあるが、本作もまた実に巧みにそれをやっていて素晴らしかった。
一つ残念なのは、もう少し演奏のシーンを観たかった。
これが少いせいで、いまいちリディアが指揮者として優れているという点がピンとこなかった。
滝井椎野

滝井椎野