ベルリン・フィル初の女性首席指揮者にしてレズビアン、ジュリアード音楽院での教授の職もあって世界をプライベートジェットで飛び回るリディア・ター。
栄光の絶頂にいる彼女をケイト・ブランシェットが完璧に演じる。美と強さと知性の権化のような姿は凄まじい。
あのヴィスコンティの『ヴェニスで死す』でも登場したマーラーの第5。アルバムのために続けたベルリン・フィルのオケとのリハーサル、完成間近の音の厚みと陶酔する美しさ、エルガーのチェロ協奏曲ではジャクリーヌ・デュ・プレを思わせる若き演奏者の圧倒的な響きなど、クラシック好きならたまらないシーンもあります。
それでも本作は、怖い。容赦ない。
なのに目が離せないのは、映画として一分の隙もなく素晴らしいから。
トッド・フィールド監督の16年ぶりの映画というのも納得の出来栄え。