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ケイコ 目を澄ませてのEpiのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.0
とにかくなるべく事前情報を入れないようにして劇場に足を運んだ。
三宅唱監督だから、普通のことはやって来ないとは思ったけれど、映し出される画面はほとんどドキュメンタリーのような佇まい。
劇伴も音楽もなく、街中の音が意図をもって耳に入ってくる。
いや、音楽はあった。彼女がいるジムに。
最初、ミット打ちの音が奏でられ、そこにパンチングマシンの音、サンドバッグを叩く音が重なり、ひとつのリズムセクションのようにリズムが重なり、ストイックなジムワークの快楽が伝わってくる。
そのミット打ちやシャドーボクシングのリズムが、主人公や会長やコーチの心情と重なる。
耳が聞こえないから、ということで、日々重なっていく苛立ち、うまく伝わらないこと、無念さが、こちらの胸を息苦しくさせ、あの試合での彼女の「声」で爆発する。
物語を鑑賞するのではなく、彼女たちのそばにいるようにして映画は進む。
観終わったあとは、しばらく戻って来れない。
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