ベルベー

TAR/ターのベルベーのネタバレレビュー・内容・結末

TAR/ター(2022年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

批評家から絶賛されてる程の凄さは感じず、確かにケイト・ブランシェットの演技は凄いけどサイコ要素ない方が良かったよなとか作りには色々物申したくなった。それよりも興味深かったのは翻訳の方で。

字幕、ケイト・ブランシェットが徹底的に男口調で訳されており、それは必要以上と言って差し支えないレベルなので違和感を抱いた。理由は分かるのだ。本作のケイト・ブランシェットは同性愛者で且つホモソーシャルで「男」として生き抜いてきて、その思考回路は完全にトキシック・マスキュリニティ。しかし本作の字幕が適切かというと…なーんか違う気がしてしまう。

何故かって、英語だと男・女で口調の違いとかは当然あるだろうけど、文字としての男言葉・女言葉の違いってそんなにない。ところが日本は男と女で言葉が全く違う、違って然るべきとしてきた国なので、翻訳作業を通して、原語ではなかった男言葉、女言葉の違いが生じてしまうのだ。現に吹替版もチェックしてみたけど、こちらはケイト・ブランシェット、めっちゃ女言葉だった。これはこれで違和感。

こうなってくると「TAR/ター」に限らず、字幕や吹替を通して海外の映画を観る時、私達は元の物語、メッセージをそのまま理解できているのか?訳を通して屈折していないか?と不安になってしまうな。でも最近のハリウッドスターやミュージシャンのインタビュー記事の翻訳って、そこらへん結構上手くやってる気がする。とすると過剰な男言葉翻訳がやっぱり変だったのかも。

映画の周辺事情が一番気になるくらいに本編には乗れていない。指揮者という職業やクラッシックという業界だからこその歪みを見れるのかと思っていたけど、そういう映画じゃなかった。普遍的な問題に濾過しすぎで印象に残らない。その割にサイコホラーやり出すのが食い合わせ悪いし。オチは「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」の変奏で、あちらは実話がベースにあるので説得力に差が出てくるよなと。うーん、ちょっとイマイチ。
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