名波ジャパン10

モリコーネ 映画が恋した音楽家の名波ジャパン10のレビュー・感想・評価

4.3
エンリオ・モリコーネ本人のインタビューを中心に彼の生涯を描くドキュメンタリー映画。音楽学院でのエピソードまでを描く前半は絶対音楽だとか対位法の作曲とか音楽の素養がないと判らない内容が続き、隣の観客はすっかり熟睡していました。しかし、映画音楽の作曲を開始してからの半生を描く後半は俄然引き込まれる展開となり、インタビューの一語一句の字幕から目が離せなくなります。ジョン・バエズ、ブルース・スプリングスティーンらのモリコーネに対する畏敬を超えた賛辞、そして、数々の名画のカットに被さるモリコーネの名曲の連続は贅沢そのもの。映画音楽を作曲することを当初卑下していたモリコーネがその映画音楽を20世紀最高の現代音楽にまで高めた道程が見事に描かれています。映画のカットとオーケストラがその映画音楽を演奏しているシーンを交互に繰り返す演出からは単に映画音楽の巨匠への賛歌に留まらない映画音楽そのものへの深い敬愛が感じられました。映画作品における映画音楽の重要性を再認識し、これからは作品の中での音楽にしっかりと耳を傾けたいと思いました。「エンリオ・モリコーネなんて知らない」という方にも是非観て頂きたい作品です。