satoshi

モリコーネ 映画が恋した音楽家のsatoshiのレビュー・感想・評価

4.3
 偉大なるマエストロに敬礼。

 モリコーネの関わった作品は、レオーネやトルナトーレとの一連の作品、『アンタッチャブル』、『ヘイトフル・エイト』くらいしか観たことはなかった。本作は、一介のトランペット奏者でしかなかった青年が、如何にして巨匠となったか。その足跡を追ったドキュメンタリー映画。トリビアも多く、キューブリックとニアミスしてたとは知らなかった。

 マカロニウエスタンからトルナトーレ、タランティーノの映画の映像も交えて描かれる。無論、それらは素晴らしい映画ばかりであり、画面に映る度に興奮してしまう。情報の密度に圧倒される。情報が多すぎるあまり、映画がそれを処理するだけになってしまい、構成と編集が歪になってはいるものの、モリコーネという巨人の足跡を辿ることができる。

 本作はモリコーネが如何にして曲を産み出していったのか、をインタビューから掘り起こす。そこに見えてくるのは、彼が如何に論理的な思考のもと映画に向き合っていたかという事実。多種多様な映画に合った曲を産み出し、映画をより傑作にしていく過程を編集で描いている。『荒野の用心棒』に曲を当て、「完成」するまでの過程を描いたシーン、彼が口ずさむ曲が実際の音楽となり、実際の映画とともに映される点は、それまでの過程を知っているだけに、感動がより深くなる。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』、『ミッション』のところは特に素晴らしかったし、彼が関わった映画を見返したくなった。

 『映画が恋した音楽家』の副題も良い。本作を観ると分かるけど、映画が彼を放さなかったと思うから。彼が与えた影響はあまりにも大きい。

 余談。終盤で、タランティーノがめっちゃ嬉しそうに話しててホッコリした。後、ジョン・ウィリアムズが「あの年で現役なのが凄いね!」って言ってたけど、「アンタも大概だろ!」と思った。
satoshi

satoshi