2024年末時点で、Filmarksで自分がMark!した1000本以上の映画中、★5.0を付けているのは20本のみ。そのうち4本が、モリコーネが音楽を手掛けた作品だ。セルジオ・レオーネの『夕陽のガンマン』『ウエスタン』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』、そしてタランティーノの『ヘイトフル・エイト』。
モリコーネを初めて知ったのは高校生の頃、御多分に洩れず『ニュー・シネマ・パラダイス』を観て。時代は前後するが、その後、レオーネの一連のマカロニウエスタンに出会い、その面白さと情感の漂い具合に魅了された。さらに『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』は、自分にとって生涯マイベスト映画の一つとなる。これらの作品の魅力の多くは、モリコーネの音楽によるものに他ならない。彼の音楽は、単なるテーマ曲やBGMの枠を超え、「映画音楽」として堂々と存在感を主張しながら、映画作品の魅力を極限まで押し上げる。これはモリコーネ以外にできない芸当である。
ドキュメンタリー映画『モリコーネ 映画が恋した音楽家』は、160分近い尺の中でモリコーネの人生と映画音楽の軌跡を丹念に追いかける。序盤は証言インタビューが中心の構成に観続けるのがやや苦痛に感じられる予感もあった。だが、モリコーネが映画音楽の道に入るあたりから、画面に釘付けになる。モリコーネ自身や関係者たちの証言が、実際の映画シーンと重なることで、圧倒的な説得力と魅力を生み出している。
モリコーネの記憶力は驚異的で、当時の音楽制作過程や関係者とのやり取りを饒舌に語る姿には感嘆せざるを得ない。「編曲を発明した」「実験音楽」と評されるように、缶を転がす音や口笛を取り入れるなど、彼のアイデアは独創的かつ挑戦的だった。「3つの音を4拍子で」という発想を楽しげに語る姿や、「まず妻のマリアに聴かせる」と、彼の創作の背後にある愛妻の支えが垣間見えるところも印象的。
クリント・イーストウッド、ベルナルド・ベルトルッチ、ハンス・ジマー、ブルース・スプリングスティーン…多くの映画界・音楽界の巨匠たちが、モリコーネの偉業と才能を惜しみなく称賛する。アカデミー賞では長らく無冠だったが、名誉賞を受賞、その後に『ヘイトフル・エイト』でついに作曲賞を受賞するというのも感動的だ。かつて音楽としての地位が低かった映画音楽の世界に逡巡しながら足を踏み入れた彼が、次第にその世界に夢中になり、最終的には「映画音楽は本格的な現代音楽」と語るに至る。この言葉には、彼の矜持と誇りが込められているように思える。「モーツァルトかベートーヴェンかは200年後にわかる」、創作に力を尽くした人生への満足度が感じられる。
モリコーネとレオーネが小学校の同級生だったというエピソードはなんとなく知っていたが、集合写真で並ぶ二人の姿を見ることができたのは貴重だった。911テロで世界貿易センタービルに航空機が突っ込み、崩壊する映像も、今ではなかなか見ることができないという意味で貴重。