マインド亀

神々の山嶺のマインド亀のレビュー・感想・評価

神々の山嶺(2021年製作の映画)
4.0
●原作、漫画未読、実写映画版オープニングのみで一旦休止状態で本作を鑑賞

●まず、この素晴らしい作品がフランス作品ということに嫉妬。いや、フランスのアニメ化で良かった。本当にすばらしかった、そう思える一作でした。なにより、フランスのバンド・デシネに影響を受けた谷口ジローの漫画を、フランス人がアニメ化するというのがなんとも感慨深いではありませんか。
鮮烈な色合い、シンプルで力強い描線がバンド・デシネ調で、エベレストの雪と空だけで表される過酷な風景にはとてもマッチしています。また、繊細な光の使い方や、アニメだから撮影できる広角の画角によって、絵なのに実写を超える広大さと臨場感を感じることができました。

●また、尺は90分台と実写よりも随分短くスピーディ。ストーリーもシンプルで、テーマをはっきりと浮かび上がらせ観客に問いかけます。なぜ山を登るのか。それはまさに、なぜアニメを作るのか、なぜ漫画を描き続けるのか、という制作チームと谷口ジローの問いかけそのものに思えてならないのです。もったりするところがないのが本当に良い。私が実写版をオープニングでやめてしまったのは、重厚な音楽がしんどくて、無駄なシーンにうんざりしてしまったからです。頑張ってそれを乗り越えて後日見てみます。

●実写版は重厚なオーケストラで重厚なシーンを演出していますが、本作はシンセを使ってどことなく異世界感が表されております。テンポの良い曲のお陰で登山家の恍惚な気分も観客に伝わります。また、ヘッドホン鑑賞をしていたのですが自然音もすばらしかった。特に雪崩れで埋まってしまうシーンは、本当に息苦しさを覚えてしまうほど。絵画共々実写以上のリアリズムへのこだわり。まさに圧巻です。

●ポスターのキャッチコピーには「究極の冒険ミステリーが始まる」と、なにやらまるでホームズの冒険クラスのワクワク感がありますが、全くミステリー感はありませんのであしからず。そういう話では全くございません。壮大で死と隣合わせの山の姿を思う存分堪能できる、素晴らしいアニメでございました。

邦画実写『エヴェレスト 神々の山嶺』のレビューはこちら
https://filmarks.com/movies/58771/reviews/147892994
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