ミシンそば

田舎の日曜日のミシンそばのレビュー・感想・評価

田舎の日曜日(1984年製作の映画)
3.8
ゆっくりとした時が流れる、二十世紀初頭の自然豊かなパリ郊外の田舎の日曜日。
老画家の屋敷に息子夫婦が来て、そこにもう一人の娘もやってきて……

正直、この映画はそれが全てではあるが、独特なノスタルジーを感じられる。
幻想表現は押さえてはいるのだが、老人に付きまとう死の影を匂わせる演出は、どこか「野いちご」に通じるところもあり。

老人本人の述懐や家族(特に娘)への接し方からも、彼が画家として、親として、無難にしか生きてこなかったことは観ててよく分かる。
「まあ、こんなもんか」と人生を畳む準備をしているところも。
娘との対話の末に示された新しい道への歩みかた。
ラストのあのシーンが「それ」に対する応答なんだろうが、それ以上深く、となると推し量るに余りある。

劇的な展開とは何か。
ドンパチ?モンスターの襲撃?家族のドロドロな諍い?
そんなもんはこの映画にはないよ。
それでも人の心は大きく動くし、ドラマを広げようとしたらいくらでもできる。それが人生なんだろう。

うるさい映画に疲れたなら、一度こう言う映画に触れてみては?と人に勧めたい佳作だった。