どの場面を切り取っても、淡い水彩画のようなフランスの田舎。
妻を亡くし、メイドと2人暮らしのラドミラル。日曜日には都会から子どもたちが帰省する。
真面目で優しい息子ゴンザグと、その家族。
そして、自由奔放で明るい娘のイレーヌ。
若さ溢れる、眩しい子どもたち。
孫を見て「わたしも子どもの時はそうだった」
息子を見て「お前が子どもの時はこうだった」
そして、ふいに自分の手を見ては老いを感じる。
色々な想いでいっぱいになり、しばしば言葉を失うラドミラル。
賑やかな昼下がり。
暗い考えがちらつくが、あえて見てみぬふり。
しかし、夕方の見送りの時間になると寂しさでいっぱいになる。
特に、気まぐれに帰省しては、慌ただしく帰っていく娘を見送る時に…。
庭で昼寝をしたり、お茶をしたり、絵を描いたり。
ゆったりした幻想的なひとときと、老いと孤独という現実。
イレーヌが出てきた瞬間、その華やかさと愛嬌いっぱいの笑顔にパッと空気が明るくなった。
ラドミラルは嬉しさが込み上げると同時に、やがて娘が帰ってしまう寂しい時間を見つめている。
あえて恋人のことは話さないイレーヌ。
あえて恋人のことは聞かない父。
しかし、恋人と会うため家を飛び出したイレーヌ。
「いつもは、あそこで手をふるのに…」
見送る姿が切ない。
きっとカタチは違っても、どこにでもある家族の1ページ。
ずっと同じではいられない。大切な時間はゆっくりでも確実に流れ、自分の立場も変化していく。
切ないけれど自然の流れを受け止めて、もっと父親孝行しようと思った。
なんともいえない余韻がいつまでも残る、素敵な映画でした✨