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ケイコ 目を澄ませてのsheのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.2
2022年映画納めに最高の1本。
ケイコと、ケイコに寄りそう人々、荒川の景色を静かに見つめる傑作。こういう作品に出会うために、自分は映画を見続けているんだと再確認。
大きな展開はなく劇伴もない、柔らかい午後の光みたいな美しい光景を、ずっと見ていたいと思った。

時々定点で映し出される行き交う電車と高速道路、ジム近くの階段なんかは、フィルムのざらつき具合も相まってもう小津。。特に高架下に漏れる電車の光の表現には痺れた。ケイコはこういうところで生きているんだなーと、勝手に全部を知って見守ってる気分。
驚いたのは字幕表現。初めてケイコの言葉を知れる弟との手話のシーン。字幕が手話の後に静止画で出て来るのがサイレント映画みたいで、今2人は何を喋ってるんだろう?と一瞬ドキドキする。シーンによって出し方を変えてて、時には字幕を出さずに観客がおいてけぼりになったりすることもあって。字幕も演出の一部になってて心乱される感じが良い。

あとはもう、ケイコがあまりにも良くて。バランスボールで歯を磨くケイコ、判定勝ち後に笑顔ができないケイコ、会長に渡された帽子を逆に被るケイコに目が離せない。
ケイコの日記、会長とのシャドーボクシングは、涙が溢れ出てしばらく止まらなかった。朗読に弱い。。あのシーンはオールタイムベスト級に好きだ。
会長の「才能は無いかなぁ…」で、奥のトレーナーが吹き出すところ、弟と弟の彼女と3人でシャドーボクシングからのダンスの多幸感。なんでこんなにずっと優しいんだろう。レビューを書きながらまた泣きそう。

シネコンで年齢層高めのほぼ1人客で埋まってる空間も新鮮で、ぐっとくるものがあった。
今年は昨年よりもっと沢山劇場で観たい。映画大好き!
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