フィルム撮影の、絶妙な黄みやホームビデオ感が好きだった。カメラのアングルや画面全体の絵がきれい。聞こえないボクサーが主人公だからか、映画全体が静かで、でもジムでの縄跳びやステップ、ジャブ、ミット打ちの音がすごく鮮明に聞こえてきて聞き心地がよかった。
岸井ゆきのさんの演技に心掴まれた。目がいいケイコ、目がすごく印象的だった。困った顔や苛立った顔、嬉しい顔、一生懸命な顔、目がすごく感情を出していてどきっとしてしまう。ゆるく温かそうな弟とのやりとりがほっこりしてとてもよかったし、途中から弟の彼女も加わって夜にジャブの練習したり、踊ったりしてるのが微笑ましくて笑った。それぞれの登場人物が綺麗事じゃなくて等身大、リアルでそこもまたよかった。ケイコがつけてたトレーニング日誌、ケイコの血が通っててなんだか泣きそうになった。悔しいような、切ないような、熱いような気持ちになった。