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パスト ライブス/再会の723のレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
3.7
A24、韓国、に惹かれて観た。
幼い頃韓国でお互いに思い合っていた2人が約20年後に再会する、恋愛ものだと思っていたが、もっと色々な要素があったように感じた。

最初はノラとヘソン、アーサーがバーにいる様子をアメリカ現地の人が第三者的にみて、3人の関係や状況を想像するシーンから始まる。アジア人に見える2人と欧米人に見える1人、という風に話していた。ノラとアーサーが寝室で語り合うシーンも印象的だった。ノラは寝言は韓国語でしか話さない、それはアーサーにとっては彼女の、アーサーには入ってゆけない部分に思えてなんとも言えない気持ちになるということ。アーサーはユダヤ人で、ノラの両親は移民としてやって来て、そのゴールがアーサーとノラが一緒にいる運命で合っていたのか、懐疑的に思っていないかと気にしていること。アーティストインレジデンスで出会ったのがもし違う人だったら、今一緒にいるのは違う人だったかもしれないこと。

ノラがヘソンについてアーサーに話すシーンで、ヘソンといることで自分が韓国人らしくないと強く実感したということ。ヘソンは韓国人らしい考え方で韓国人らしい韓国人、韓国人的な考え方でいうところの男性的だということ。
でもノラの根底には韓国人らしいイニョン(因縁みたいなもの?前世信仰?)の考え方が強くあって、要所要所でイニョンについて考えている。
考え方と言語は強く関係しているのかということや、言語の壁があって伝えたいのに伝えられない、分かりたいのに分かれないもどかしさ、それまで自分が過ごして来た場所が自分を形成する上で大きな要素になっていること、などを考えてしまった。

この映画を観て思うことは人それぞれだろうし、色々な余白みたいなものがあるのだろうなと思った。余韻余白のある作品だった。でも思ったよりも観た後はどろどろもやもやとした気持ちにはならなかった。

ラストでヘソンとノラが言葉を交わすわけでもなく見つめているシーン、なんとも言えない気持ちになった。言語外のコミュニケーションしているみたいだった。
ヘソンを見送ったあとに何故か泣くノラとそれを何も言わずに抱きしめるアーサーも切なく温かかった。

新作なのに一昔前の作品を見ているような気持ちになるA24の映画がとてもいい!
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