耳の聴こえないボクサーという稀有な存在でありながら、その事実はあくまで一つの個性であり、正直なところ、どうでもいいことで、決してその事実に悲観的になることや同情的になることを一切せず、閉鎖を余儀なくされた町の小さなジムに関わる人々の日常とほんの少しのそんな中で起きる事象を淡々と静かに穏やかにゆっくりと描いているからこそ、随所で音のない世界に身を置くケイコの私たちにとって余りにも非日常な世界がまるでそばにいるかのように浮かび上がってくる。
ざらついた映像と言葉少なに感情抑えめで平然と画面に存在する演者。
それでも確かに感じられる強さ。
