Jun潤

君は放課後インソムニアのJun潤のレビュー・感想・評価

君は放課後インソムニア(2023年製作の映画)
4.3
2023.06.24

森七菜×奥平大兼×髙橋泉脚本。
最近青春系にはご無沙汰だった森ちゃんと、『MOTHER マザー』にて衝撃のデビューを飾ってから社会派やらシリアスものに出ずっぱりだった大兼がダブル主演で青春系キラキラ漫画を実写化!観るしかねぇ!!
現在放送中の地上波アニメは未視聴。

高校生の中見丸太は不眠症。
暗闇の中募っていく不安と癒えない体の疲労、普通の人でありたいと願う中見は、誰にも不眠症のことを話せないでいた。
そんな時、誰もいないはずの天文台で中見が出会った、自分と同じ不眠症のクラスメイト、曲伊咲。
眠れない夜を楽しく過ごすため、2人は同好会を結成、誰もいない夜の町に繰り出し、天文台を自分たちの好きなように作り変えていった。
しかしそんな2人の行動はついに教師の知るところとなり、中見と曲は自分たちの居場所を守るために天文部としての活動を始める。
クラスメイトたちも巻き込んで準備した観望会当日の天候は雨。
自責の念に駆られる中見に曲は、心臓を患っていた自身の過去を打ち明ける。

んあ〜!!甘酸っっぺぇぇ〜〜!!!
青春×不眠症×天体にちょいと不純を混ぜて。
しかし完全に潔癖でプラトニックな男女関係にストーリーが生まれることはないですよ。
互いの鼓動と、声と、存在でもって、過去の出来事や孤独感、不安な気持ちによる心の空白を、20代後半には眩し過ぎて直視できない高校生たちが埋め合わせ合う、素敵な作品。

まずは不眠症と聞くと、眠ることのできない重篤な病のようですが、誰しも眠れない夜の一つや二つ、あったのではないでしょうか。
僕にも覚えがあります。
それこそ学生時代の眠れなくても翌日平気だったり授業中に寝て帳消しにしたりしていた頃から、社会人時代の眠らないといけないという焦燥に駆られた頃も。
それにみんながみんな寝たくて寝ているわけじゃない、全員が希望の朝を迎えているわけじゃない。
夜が来て眠り、朝が来て起きる、それができなくても、そこにどんな気持ちがあっても、全然変なことじゃない。
と、経験を積めば分かることも、未熟な若者たちには分からず、誰にも言えない気持ちを共有できる誰かに寄りかかって、寄り添って、自由に夜を駆けていく。

そして宇宙というのはいつも無限のストーリーを生み出しますね。
眠れない夜に光る星、それは空だけでなく目の前にもある。
何かの歌か作品で聞いた、何光年も離れた星から見た地球は過去の姿をしている。
現代の中見と曲が過去に人が生きた証である遺跡で星を見て、遠く離れた星が見ることになる未来に向けて言葉と、存在を残す。
さらには、空から見下ろす太陽や星のように、たまに不快なほどに眩しく、たまに優しく見守ってくれる大人たちの存在、それもまた上手くリンクして描かれていました。

現在も連載中で、1クールのアニメを放送できるほどの原作を2時間にまとめるというのは土台無理な話で、綺麗にまとまっていた中見と曲の話の側にあった、扱いきれていない家族や友人たちの設定が見え隠れする描写は許容範囲内。
しかし森&大兼の演技や各キャラによる細かい描写、セリフとBGMのオンとオフの切り替えに、一眼レフを通しているような演出によって、キラキラ眩しい青春の様相から、儚げで切ない人々の営みまで、アニメ的な世界観を忠実とはまた違う形で上手いこと現実に落とし込んでいました。

眠ることと眠れないこと、生きることと死ぬこと、希望と絶望。
大切な人を失ってしまった絶望による不眠から、様々な知識を吸収して希望へと繋げた中見と、生きていることを実感できる希望による不眠から、いつか必ず死んでしまうことと自分の存在が消えてしまうことに絶望する曲。
そんな2人を繋げる夜空の星と天体観測と一緒に過ごす日々。
曲が7つ橋の言い伝えに願うのは、他の人と同じように眠れることか2人で起き続けることか。
眠れても眠れなくても、気持ちが良くても悪くても、夜は明けて朝が来て、時間は進んでその分自分も進む。
ならばせめて、この先もずっと好きでいられる人と共に。

はぁ、、田舎なのにデカすぎる中庭と天文台がある高校ってシャフト制作のアニメかよ。
眠れない夜に家を出て散歩していた頃、番号!1!…………俺の隣にも森ちゃんがいたらなぁぁぁ
Jun潤

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