マインド亀

N号棟のマインド亀のレビュー・感想・評価

N号棟(2021年製作の映画)
2.5
自称考察系ホラーらしいですが果たして

●全く前知識ないまま鑑賞いたしました。
観ている最中にところどころ『ミッドサマー』『ヘレディタリー/継承』などのアリ・アスター監督作品や、『回路』『CURE』『クリーピー 偽りの隣人』の黒沢清監督作品っ「ぽさ」を何やらやりたいんだろうな〜って感じがしたのですが、後で「『ミッドサマー』と『回路』のオマージュを入れた」という記事を読んで、「ああそうですか」というのが正直な感想です。「やっぱりな!ニヤリ」という感じではなかったです。
正直、「ぽさ」は散見されますが、薄めたスープのような感じでどれも美味しくない。圧倒的に「嫌な感じ」が足りない。それは演出や撮影の力不足なのか、どれをとっても「やりたいことは分かる」くらいの見せ方で、サプライズがなかったと思います。

●正直、「団地が怖い」というのはもう1980年代の大友克洋「童夢」から表現されていたことで、もう何十年と使い古されてきたネタではあります。なのですでに古いというか、もし今団地の強さを表現するなら、なんでもない風景の禍々しさをねちっこく美しく取らないとダメなのに、なんかゴミの山、部屋の汚さ、トイレのグロさ、嫌な染みなど観たことあるホラーの小道具が記号的に単発で出てくるだけで、怖さが持続しません。黒沢清はなぜかなんでもない風景を恐ろしく見せるのが最強で、特に「クリーピー〜」のあのコの字型の家の並びの禍々しさは異様。それはやっぱり同時に映る俳優の動かし方や、音楽、カメラの動かし方など総合的にいや~な感じの出し方を熟知しているのだと思います。
団地をただ移しているだけで怖いという時代は過ぎ去りました。今や映画だけでなくゲームの世界にももっとこわい団地ホラーがありますからね。

●まあ、リアルとファンタジーの間にある作品なので、カルト宗教の不気味さを描いていている割には、まだまともな人が多そうだし、心霊的なホラーを描いている割にはヤラセくささも残しているというどっちつかずな作品です。あえてそうしてるのかもしれませんが、おかげでどうとでも取れるし、どうでもいい筋立てになってしまっている気がします。もう少しチューニングが必要かなと。

●また、考察系を謳ってる割には、圧倒的に情報量がスカスカで足りてない気がします。『ミッドサマー』や『ヘレディタリー』は特に序盤から映る「先に未来を提示する」情報量が多すぎて、観る側も必死に画面を凝視することになりますし、しかも繰り返し観れば整合性がしっかりとれています。
しかし本作は、「おそらく意味があることなんだろう」けど、「うーん、どうなんだ?」と首をひねることが多い。例えば赤と白の服の違いや、渡された飲み物を飲んだかどうか、などですが、考察系のnoteなどを読んでいてもいまいちしっくりきません。そりゃ、なんでもかんでも整合性を取ることがいいとは思いませんが、結果的にどうとでも読み取れすぎるのも、投げっぱなしし過ぎて、結果なにも考えていなかったんじゃないかと思ってしまいます。
考察系noteを読んでも、例えば「主人公は子供をおろしていたのではないか」とか「実は主人この妄想で元カノと今カノの立場が逆」とか、かなり観る側の想像力を100%以上のフル稼働させて書かれているので、「確かに主人公が子供をおろしていた」方が面白いのではないか、とは思うものの、作品のどこを観てもそんなふうに読み取れるシーンは無いので、それを考察というのは違うだろうと。
考察系ではなく、妄想力鍛え系なのではないかと思うのですがどうでしょうか。

●正直、この作品の主人公が萩原みのりさんの確かな演技力があるからまだ観られる作品になっていたのだと思うのですが、彼女以外がどうかと言うと正直微妙。キャラクターの判別もあんまり出来ないし、肝心の主人公でさえ、そのタナトフォビアの掘り下げが微妙。なんでそうなったかを明示することが全て良いとは思いませんが、もう少し彼女と周囲の世界との軋轢やストレスを描かないと、彼女一人が浮いてる感覚が共有されにくくて、結果的によくわからないまま終わってる気がします。
(脚本段階では彼女が鍋パーティーに誘った友人たちがドタキャンしていくシーンがあったそうですが、本編ではカットされてるらしいです。うーん、あったほうが良いような気がするんですが。)

●色々な作品でバイプレーヤー的に活躍していた萩原みのりさんを陰ながら応援していたのですが、せっかくの主人公作品がなんだかよくわからないフワフワしたものになったのはちょっと残念でした。しかしながら圧倒的演技力だと思いました。


ネタバレ










●「黒幕は教授」的なラストですが、全く意味がわかりません。あの変なマークって劇中ありましたっけ?あったとしても教授の失踪の意味は?
なんか考察観てても〜〜説が、多すぎて、正直うまくいってない感半端ないです。めんどくさー。
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