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ALIVEHOON アライブフーンのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ALIVEHOON アライブフーン(2022年製作の映画)
3.5
 最初、ヘルメットを被りステアリングを握るものだから誰が誰なのかさっぱりわからなかったのだが、あとで「あぁ、この人だったのね」と納得する(声だけではわからなかった)。ドリフトチーム「チームアライブ」はあの大事故が元で路頭に迷う寸前だ。チームの精神的支柱である武藤亮介(陣内孝則)の身体はもう走ることもままならず、1人娘である夏美(吉川愛)は途方に暮れる。然し夏美は新たなドライバー候補に光明を見出す。物語はイマドキこんなベタな話があるのかよと思うくらいベタベタで、いかにも昭和のヤンキー文化の原風景のようだが、とにかくドリフト・シーンのライド感とド迫力のカメラワークが素晴らしい。大羽紘一(野村周平)はとにかく生きることに不器用で引きこもりで、周りがイライラして声を上げるほど本当にどうしようもない青年なのだが、町工場のオーナー(モロ師岡)がとにかく優しい。その辺りも昭和の人情劇そのもので、陣内孝則の厳しさは昭和の名優・菅原文太をも彷彿とさせる。要は自分が認めた人間でなければ簡単に心を開かないのだが、一旦腹を割ればとことんまで面倒を見る。イマドキの映画にはない無骨さを感じさせるが、当の主人公はEスポーツという最先端のゲームの世界で時代の寵児なのだ。

 Eスポーツの世界チャンピオンが実車のステアリングを握る。今作はそのバーチャルvsリアルのバランスがひたすらユニークだ。実際に世界中では様々なゲーマーがレーサーへの転身を図っているようだが、あくまで映画の様には華やかに行かない。だがバーチャルからリアルへの侵犯を試みる主人公の姿は絵空事でもドキドキする。まったくの未経験からレースの世界へと上り詰める大羽紘一の姿は魅力的だが、最初から最後まで引きこもりの様な演技を貫いたのは多少疑問も残る。陣内孝則や本田博太郎の演技も言い方は悪いがはっきり言って臭い。昭和の匂いしかしないし今の若者にとってはToo Muchに見える演技も多少大目に見てやって欲しい。流れるようなペダルワークやシフトチェンジ、ステアリング操作はプロのレーサーが実走しており、僅か数cm単位までにじり寄る車体は真にダイナミックで、擦れ落ちたタイヤカスまで逃さない。栄光と挫折に彩られた勝負の世界を1本の映画で描こうとすればこのような構成しかないと言わんばかりの演出は定型を外さないし、監修も手掛けた土屋圭一の解説も臭い 笑。だが齋藤太吾や川畑真人は本人役で出演し、GT300クラスの織戸学も出て来る。武藤亮介と大羽紘一の接着剤として登場する夏美を演じる吉川愛の思いっきりの良い演技も印象に残る。
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