ヒノモト

焼け跡クロニクルのヒノモトのレビュー・感想・評価

焼け跡クロニクル(2022年製作の映画)
4.1
ドキュメンタリー映画3日目は、「20世紀ノスタルジア」の原將人監督の最新作。
「20世紀ノスタルジア」は広末涼子さんのデビュー作として有名ですけど、私自身が小さな映画を作るきっかけにもなった作品で、元々8ミリ映画時代から現在もうベテランの名だたる監督さんからも一目置かれた存在の監督さんなので、この2018に起きた自宅の全焼のニュースを知った時は結構ショックを受けたことを覚えています。

ただ、その後あまり積極的に追いかけることをしていなかったので、その後どのような経緯で、自身の火事の経験を映画にするに至ったのかを知って、大変驚きました。

映画自体は火事の前から始まるのですが、やはり衝撃的なのは火事が起きた当日の様子を火傷を追ってしまった原監督の代わりに奥さんを原まおりさんがiPhoneで撮影を始めていること。

撮影されているのは消防署員さんと対処の仕方だったり、主に小さな双子の娘さんの様子が中心で、後に入院されている原監督の火傷のあとなども生々しく描かれていきます。

その後は、一時的な避難生活から少しずつ段階を経て、普通の生活に戻っていく様を描いていくのですが、直接的な火事の描写はないものの、子供のケアを第一に考えながらも、この状況を記録に残そうという使命感は、監督のそばにいる奥さんの心持ちは尋常ではないと思いました。

火傷が少し回復されてからは、監督自らカメラを回し、全焼した自宅の跡から、焼け残った未編集の8ミリフィルムを掘り返し、手回しの編集機にかけて編集された映像が差し込まれて、現在は大人になられた長男の幼少期の記録が、火事により一部溶けた状態になって変色したフィルムの粒子が、記憶としての時代の儚さを奇しくも演出していて、切なくなりました。

映画の終盤、奥さんの実家への帰省旅行の光景を8ミリで撮られているのですが、少し成長された娘さんの姿や、現代を象徴するマスク姿をあえて、8ミリというフォーカスがソフトなフォーマットで撮影することで生まれる、一番現実に近い映像でありながら、なぜかファンタジーのような味わいになるのも、不思議な感覚で味わい深い作品になりました。

上映後は、原將人監督と奥さんの原まおり監督が京都からお越しいただいて、撮影当時の貴重なお話を聞くことができました。

撮影された映像を編集しようと見返すまで、かなりの時間が掛かられたとのことで、大ベテランの映画作家であっても、ご自身の体験としては心傷から立ち直るまでは時間がかかったことを感じられるエピソードの数々に、元気になられて本当によかったと思いました。
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