叡福寺清子

小さき麦の花の叡福寺清子のレビュー・感想・評価

小さき麦の花(2022年製作の映画)
4.2
中国の田舎の一夫婦の物語で二時間半って大丈夫なの?と視聴前訝った三遊亭呼延灼です.こんばんわ.そして大丈夫でした.驚きました.疑って御免なさい.

寒村のある一家で木偶の坊扱いの四男坊と,障害がありこれまた一家で厄介者扱いされている娘.『あの二人結婚させたらよかんべぇ』『そだ,そだ』と本人達の意思は全く配慮されずに夫婦になったヨウティエ氏とクイインさん.ヨウティエさんは無口で感情を露わにすることこそ少ないですが,勤勉で実直が服着て歩いてるような人.さらにはクイインさんを何よりも大切に想い,優しく接します.クイインさんも嫁いだ直後は馴れない環境に戸惑い,すぐに小便を漏らしてしまいます.ですがヨウティエさんの人柄にほだされ,極貧生活ではありますが,二人は割れ鍋に綴じ蓋の例え通り周囲が羨む夫婦になります.

特に事件らしい事件は,ほとんど起こりません.終盤に一つ大事件が起こりますが,それまでは夫婦の日常が描かれます.つまり労働と食事.驚異なのはヨウティエさんの圧倒的労働力.前述したように勤勉で実直ですから,とにかく手を抜きません.耕地から播種,麦刈り.その間にも自宅を建造・・・赤貧な夫婦は空き家に勝手に住み込んでいましたが,ある事柄きっかけで,レンガ造りから何まで全てDIYで建造してしまいます.その事に最上の幸せを感じるクイインさん.麦が売れたら市に行ってみよう.そんな事が願いになるほど,この夫婦は貧しかったのです.

唖然としたのは,クイインの中の人がプロパーな俳優さんだった事.クインさんの挙動が演技ってのはホントに驚きです.左手の震えとか愚鈍そうなオーラとか,あれ演技なの?それ知ったとしても信じられないですだよ.なお,ヨウティエさんは,本職の農民だそうです.

日本以上の競争社会である中国内では.その競争に疲れた若者が本作に癒やしを見出しているそうですね.なるほど,確かにそういう側面はわからなくもないですが,オマイラ若者が社会を改革して,この夫婦みたいな赤貧家族を救うようにせんとあかんのちゃうん?ヨウティエさんとクイインさんは動物園のパンダとちゃうねんから,勝手に癒やし求めないでね,とも思った次第.それってひねくれすぎかしらね.

なお,邦題の意味は視聴していただければ判明いたします.ちょっと泣きます.
と同時に,やればできるじゃん,この調子で素敵な邦題付けてよねとも思った次第.