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小説家の映画のtigerpantsのネタバレレビュー・内容・結末

小説家の映画(2022年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

スランプで断筆中の有名女性作家がこれまた休業中の女優と邂逅し、彼女を主役に据えた短編映画を監督してみたい、と申し出るのだが…。

かれこれ20年ぐらい昔、俳優とか芸人とかミュージシャンに監督をやらせた映画が日本でも流行った時期があった。結局、そこまで芳しい化学反応を見せるケースが稀だったのか、いつのまにかそうしたブームも廃ってしまった。

ところでこちらのホン・サンスの近作、まずは(イ・ヘヨン扮する)中年作家の視点から紡がれるシーンが冒頭からしばらく続き、監督のミューズことキム・ミニが登場するまで、それなりの時間が経過し、登場人物が交錯する。

そうした〝建てつけ〟の目新しさゆえ、すわっ「ホン・サンスの新境地か?」と早合点するところだったが…この2人が出揃ってからは「会食→移動→飲み→クダ巻き」という、いつもながらの安定展開。

固定カメラによる会話劇が、ぎりぎりのアンチ・クライマックスを持続させつつ、女性小説家が監督した映画の〝試写〟を観終えた女優の、なんともいえないモヤった表情で、映画は唐突に幕を下ろす。

従来のホン・サンス映画では、学者や作家や映画監督といった〝クリエイター〟の傲慢さやひとりよがりは、もっぱら〝男性側〟が引き受けていたことを思うと、本作内におけるイ・ヘヨン演ずる小説家の〝迷走〟ぶりは、やはり一種の新境地の萌芽か?(いや、パート・カラーも含め、本作自体が実験的/過渡期的な趣向なのかもしれず…)。

そういえば、食堂のガラス越しに目線を送る少女(ホン・サンス映画に頻出する座敷童的存在)って、結局何だったんだろ?
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