旅するランナー

午前4時にパリの夜は明けるの旅するランナーのレビュー・感想・評価

3.7
【1980年代のパリ行き夜行列車の乗客】

シャルロット・ゲンズブールがずっとメソメソしている、雰囲気映画。
1980年代のパリに住む家族の成り行きを追っていくんですけど、ちょっと散漫な感じです。
当時のアーカイブ映像が多用されているので、継ぎはぎ感が出てしまったのかもしれません。

「サマーフィーリング」「アマンダと僕」のミカエル・アース監督らしい、繊細で美しいシーンは確かにあります。
バイクの二人乗り、
ラジオ番組「夜の乗客」のスタジオ、
ジョー・ダッサン「Et si tu n'existais pas(もし君がいなかったら)」で踊る家族たち、
エリック・ロメール「満月の夜」やジャック・リヴェット「北の橋」の引用、
25歳で急逝したパスカル・オジェへのオマージュ。
そして、シャルロット・ゲンズブール&エマニュエル・ベアールがダンスするシーンを見られるだけでも、この映画を観る価値はあります。
1980年代への憧憬と、時の流れの実感。

そして、他の出演者たちのあぶなっかしい繊細さが見られる演技も心に残ります。
息子役のキト・レイヨン=リシュテルは、若かりしジャン=ピエール・レオを彷彿とさせます。
家出少女役ノエ・アビタはイザベル・アジャーニの再来てな感じです。

結局、当時のフランスでの出来事やヒット曲に、それほど馴染みがないこともあって、この映画の乗客として乗り切れなかった次第です。
劇中のセリフにもあるように、観終わってしばらく経ってから、あるいは、2度目を見ると、好きになるタイプの映画かもしれません。