ノラネコの呑んで観るシネマ

コール・ジェーン ー女性たちの秘密の電話ーのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.5
妊娠中絶へのハードルが限りなく高かった60年代末を舞台に、女性たちの中絶を助ける実在した秘密の団体“ジェーン”を描く物語。
「キャロル」の脚本で知られるフィリス・ナジーの劇場用映画監督デビュー作だが、すごく手堅い。
監督としては「コカイン・ベアー」とかおバカ映画ばかり撮ってるエリザベス・バンクスが主人公を演じるのだが、彼女の後姿の長回しショットから始まる冒頭シークエンスが秀逸。
ここだけで主人公の人となりが見えてくる、ファースト10のお手本の様な幕開けだ。
裕福でリベラル、愛する家族に恵まれた彼女は、自分の妊娠が命に関わるという事態になって、はじめて世界の実情を知る。
妊娠を継続しても”死なない可能性もある”として、病院から中絶を拒否され、子の心配はされても母体の心配はされない。
やがて平凡な主婦だった主人公は、絶望から救ってくれたジェーンの活動にのめり込んでゆく。
しかしそこでも、お金の有る無しで運命が決まる皮肉。
どうしたら、皆が救われるのかを考えた彼女は、ある結論に辿り着く。
トランプが指名した保守派の最高裁判事たちによって、女性の自己決定権が脅かされている今こそ、作る価値のある作品だろう。
中絶に限らないが、自分のことを自分で決める権利は守らねばならない。
世の中には自分の正義を押し付けてくる、おせっかいな人が多過ぎる。