これは思わぬ拾い物をした。社会問題を扱った作品でありながらユーモアに長けていて、抜けも良い。
女性が中絶する時の不安な心情が繊細に描かれている。手の震えや言葉遣い、天井のひび割れを見つめる視点のカメラワークなど、女性の身体性を可視化しようという心意気が感じられた。
自分の身体の行末を男性の医師陣に裁判をかけられる異常さを悲哀ではなく、馬鹿馬鹿しさとして描くことが素晴らしい。中絶を請け負うグループを秘密結社のように描くことで、映画としても一本筋の通ったものに仕上がっている。
なぜ危険を犯してまで違法なグループに奉仕するのかと言う点を、すぐ目の前にまで差し迫った恐怖を体験したものとしての説得力で語られる。生きる上で絶対に捨てられないものを守るためには、連帯する以外に方法がないのかもしれない。