蛇らい

ミッシングの蛇らいのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
3.2
喫煙所で1人になって思考を逡巡させているところにライターを貸して欲しいとねだられたり、ビラ配りの最中にビラの内容も確認せず何度も同じ質問をしてくる老人などの描写は、生活の上に娘が失踪しているという逃れられない事実が乗っかっているストレスとリンクさせた描写で上手い。

何度も訪れる希望と絶望の繰り返しは、大きく見れば誰の人生にも当てはまる。時間の犠牲やアクションの対価として求めてしまう希望には何の意味も持たない。かと言って映画の中に明瞭な答えを提示するわけでもなく、不意に希望の瞬間は訪れる。そこがとてつもなくリアルで、同時に監督のシビアな視点が感じられる。

欠点として感じたのは、主人公夫婦に降り注ぐネガティブな出来事の半分くらいが、短絡的な悪意に受け取れてしまったこと。より多面的で複雑な成り立ちをした無自覚な悪意も描けていたらと思う。

間違いなく石原さとみのキャリアハイを叩き出した作品ではあるが、あくまで本作の物語や方向性の枠の中での演技に留まっていたので、今後は本人の演技が物語を推進させる作品を観てみたい。
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