佐藤備忘録

PLAN 75の佐藤備忘録のネタバレレビュー・内容・結末

PLAN 75(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

解像度が高いのか低いのか、まぁ面白くはあった。

死の手続きがほんわかした感じで進められたり、ホームレスにまつわるマッチポンプがグロすぎたり、村田沙耶香もびっくりの思考実験系作品。

自分は将来若いうちに安楽死で死にたいとか漠然と思ってたけど、安楽死することが選択肢として社会に生まれるってことは、安楽死を希望しない人たちは安楽死しないっていう選択肢を選んだ人として認識されるってことなんだな。
社会状況によっては生きることを望んだ人々が「よくもまぁ図々しくも生き続けることを選んだわけだ」とか思われるのか。大変だな。

高齢者4!的な思想を持ってる若者は、個人的な実感として実のところ少なくないと思うんだけど、こう、実際の高齢者を役者に迎えた映像としてその思想を具体化したものをまざまざと見せられると流石に考えが変わる。

作品の中の高齢者像がどれだけリアルかどうかは知らないが、少なくとも実家にいるおばあちゃん以外に深く触れ合ってきた高齢者がいない自分としては、この作品と出会えて思想を矯正できて良かったなと思う。
結局、よく知らない人に優しくできないので。

群像劇風にしては出稼ぎママ目線のストーリーがえらくふわっとしてた。
出稼ぎ外国人はどういう目的でこの作品に取り入れられた存在なんだろ。
高齢者のポジションが在日外国人/移民だった可能性もある、ひいてはその他の社会属性の人だった可能性もあることを示したかったのか、単純に少子高齢化の現代社会の労働市場状況を反映したのか。

実際、身寄りも稼ぎもない高齢者ってどう生きてるんだろう。考えなきゃいけない問題なんだろうけど、考えたくないし調べたくもない。
ずっと目を背けていたいよ。

もっとプラン75反対派の登場人物がいても良かった。それこそデモ運動描写入れるみたいに。

成宮がおばあちゃんから小遣いもらってたのをもっと意図的に再現するように10万を狙う狡い奴らもいるんだろうな。
そいつらはパパ活みたいな感じでプラ活とか呼ばれるんだろうか。

片親パンだの和室界隈だのグロいネーミングが横行する現代じゃ、安楽死を望んだ高齢者が孫に残すお年玉的なお金のこともひどい言われ方するんだろうな。
渡された10万をそのままソシャゲのガチャに注ぎ込む子供たちが社会問題になって、10万円のことはログインボーナスならぬログアウトボーナスとか呼ばれるようになるんだろうな。

こんな風に変に饒舌になって書き残したり色々妄想したり考えたりする余地のある強度を持った作品だしテーマも面白いのに、終わり方がありきたりだった気がする。

狂った世界設定のくせにエンディングが平凡すぎるのかな。ストーリーとか意識せずもっと設定に振り回されて欲しかった。

変に暗示めいた演出が多かったのもちょっと鼻についた。
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