佐藤備忘録

PERFECT DAYSの佐藤備忘録のネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ほんとに憧れる、こういう日々。

朝早く起きて昨日読んだ本確認して植物に水やって好きな音楽聴きながら車運転して身体使ってマジメに働いて仕事終わりは銭湯行って行きつけの飲み屋行って自分で選んだ一冊の本読んで眠りにつく。完璧だ。

俺は本当に心の底からこういう生活をしたいと思ってる。でも多分、この生活に至るまでにはかなりハードな人生が必要なんじゃないかなという気もする。平山さんは多分父親とか家族とか社会とかと真剣に格闘した結果、ああいう生き方にたどり着いたんじゃないか。若輩者の俺が今日明日でこういう生き方にたどり着けるかと言われると難しいんじゃないか、と思ってしまう。やっぱ就活しなきゃいけないのか〜。

「影」に関して、観てる最中からどうしてもプラトンの洞窟の比喩を思い出してしまい、なんとか物語と比喩を重ねようとしたが、難しいものがある。

洞窟に閉じ込められた私たちが現実だと思って見ているのは、完璧で完全で理想的なイデアの実体そのものではなく、洞窟の壁に映ったイデアの「影」にすぎない。

影は実体の輪郭をかたどったものだ。映画で描かれる平山の生活だって影だ。長い人生のほんの一瞬の表面・外側を切り取ったものでしかない。俺たちは平山の完璧な生活自身には決して近づけない。実体の影を踏むことしかできない。しかもそれは平山の生活に限ったことではない。他のどの他者の生活に対しても、私たちは実体を掴むことはできない。できるのはただその人の人生の影を踏むことだけだ。それこそまさにみんなが皆「生きる世界が違う」から。

「この世界は、ほんとはたくさんの世界がある」

姪っ子とのシークエンス良いなぁ。やっぱり名作には年齢の離れた登場人物同士の交わりが欠かせないと思う。乗代雄介の『旅する練習』思い出した。

新緑の季節って完璧だよなぁ。ただ、この生きやすい季節以外の季節、たとえば灼熱の夏とか凍てつく冬とか、そういう季節における平山の生活も見てみたい。

平山が家に鍵かけないの毎回引っかかってた。そのくせ姪には鍵渡すし。

マジで本とこういう付き合い方をしたい。
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