このレビューはネタバレを含みます
陽にきらめくステンドグラスにバロック絵画。今にも動き出しそうな欄間の透し彫りと仏天蓋の蓮の花。
宗教建築・美術の荘厳さは、
何も知らずとも、“ほぇ~” と身も心も見上げちゃうんですが、この心理を見事に悪用したまさに模造聖典(聖人の誕生譚)ともいえるのが今作。もちろん禍々しいカルトなのが尚良し。
もう初手の傷だらけの少女が、閉じ込められていた廃墟からの脱走からして、只事じゃない。
十五年後――。
日曜の朝の家族の団欒から一転、地獄の猟銃虐殺劇。
そして、クリーチャー風お姉さん。初見で気付けなかったけど、階段のシーンは『呪怨』。そしてカミソリ…、被虐自虐描写エグさよ。
救いの無さが加速する地下室。貞操帯と恥の仮面からインスパイアされたと思しき器具を装着され、監禁されていた女性発見。甲斐甲斐しく介抱するも、教団職員到着で希望の光は潰える。
謎の宗教団体の四大聖人の御尊影(本物?)がもうスゴい。ここじゃない何処か遠くを見つめるような目に、背筋が寒くなる。
劇中では殉教者の名で呼ばれ、おそらく真理を悟り、衆生を教え導く、覚者[かくしゃ]に近しい存在を、意図的に造りあげる為、おこなわれる苦行に見立てた監禁と拷問、虐待。
自分で目指さない所にセレブさを感じる。
痛いツラい…。皮膚を切開切除を匂わすだけで、引き剥がす描写が無くて良かったかも。『ヘルレイザー2』を思い出す。
果たして五人目の覚者となり、宣託はなされ、教団トップのマドモアゼルは拳銃の弾丸にて彼岸へと渡る。
希望からか、絶望からか。
自ら望んだ苦行により悟っていないので、野狐禅の可能性も捨てきれないと思うが。
プールに浮かぶアンナと画面越しに見つめ合い思わず、
“ほぇ~”
と心のなかで声が洩れた。
陰の表現の傑作。
後追いにて『顔のない眼』(1959)を鑑賞。顔を剥ぐ反転の表現にも取れたり、徹底した描写など影響がうかがえた。
都市伝説『神との接触実験』も調べてまいりました。マドモアゼルの行動原理の手がかりになった。
【自分用MEMO】
日本における殉教
生きながら木乃伊[ミイラ]となる、即身仏。
物理的には存在しない地(観音菩薩の浄土である補陀落山)へと船出する、補陀落渡海[ふだらくとかい]。