Jun潤

ドント・ウォーリー・ダーリンのJun潤のレビュー・感想・評価

3.5
2022.11.17

予告を見て気になった作品。
プロモーションの感じ、どうやら街ごと狂気につつまれたスリラーとのこと。
最近普通にスリラーかと思いきやしれっとビビり散らかしてくるので若干怖さはありますが、気合の入った洋画であることは伝わってきているので、今回鑑賞です。

幸せな生活を送るジャックとアリス夫婦。
彼らが住むのは、同じような夫婦が暮らす同じような建物が並ぶ不思議な町。
夫たちは荒野の先へ車を走らせ“仕事”に向かう。
妻たちは家事の他に習い事や井戸端会議に花を咲かせ、時折開催されるパーティを楽しんでいた。
しかし日々の営みの至る所に違和感が存在し、その違和感を指摘した者は異常者として忌避されていた。
アリスもまた、日々強くなる違和感に頭を悩ませ、次第に世界そのものに疑問を抱いていくのだが……。

不気味で非現実的な世界観ながら、描かれているのは日本にも多く見られるムラ社会の現実。
他者によって造られたマジョリティに支配され、マイノリティは糾弾される、そんな世界を異様に描いた作品。
夫は外に出て働き、妻は家事をして夫の帰りを待つ、そんなステレオタイプな家庭の在り方に対して、真っ向から否定ではなく、あたかもそれが異常なことであるかのように描くことで、ジェンダーや職業選択について切り込んでいました。

日常シーンは本当にあるところにはありそうな団地の風景な感じなのに、間に挟まれる不気味な映像や、こちらの神経を逆撫でしてくるようなゾワゾワするBGMなど、ちゃんとスリラー作品として画面に釘付けにさせてくるし、展開に緩急がついていたので情報を整理したり結末を予想したりなどの余白を持たせていました。

全体のストーリー的にも終盤の展開的にも、ビターエンドかハッピーエンドか最後の最後までわからないように仕組んでいる印象を受けました。

結果おそらくは集合意識的な、今で言うメタバース的な真相だったわけですが、こんな世界はダメなんだ!という片側の回答だけでなく、望んで現実世界から逃避してきたキャラクターがいた事で賛否を分ける展開になっていたのも好印象でした。

結末的には現実世界では働いていないヒモニートが、夫が働いて妻を家で待たせたいというモラハラ世界に引き摺り込むなんていう垂涎ものでした。
個人間のやりとりではなく町全体でスリラー感を出していた事と、1人の人間の異常性ではなく、現実にもジャックのような考え方を持っていそうな一定数以上の人間の異常性、というより考え方レベルのもので、不気味な世界観を出していたのが今作独自の感じがして良かったですね。
Jun潤

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