ぶみ

胸騒ぎのぶみのレビュー・感想・評価

胸騒ぎ(2022年製作の映画)
3.5
誰にも言えない、届かない。

クリスチャン・タフドルップ監督、モルテン・ブリアン、スィセル・スィーム・コク等の共演によるデンマーク、オランダ製作のスリラー。
旅先で出会ったオランダ人家族から招待状を受けたことから、彼らの家を訪ねた主人公家族に巻き起こる出来事を描く。
主人公となるデンマーク人夫婦のビャアンとルイーセをブリアンとコク、彼らを招き入れるオランダ人夫婦のパトリックとカリンをフェジャ・ファン・フェットとカリーナ・スムルダースが演じているほか、彼らのそれぞれの子どもとなるアウネスとアーベルを加えた二家族が中心となり、登場人物もほぼこの六人。
物語は、イタリアでデンマーク人家族とオランダ人家族が偶然出会い意気投合するシーンでスタート、その後、オランダ人家族の家で休暇を過ごす六人の姿が描かれるのだが、最高の週末になるであろう雰囲気が醸し出されるのは一瞬で、会話の端々に感じるズレや居心地の悪さ、思いのすれ違い等々により、徐々に不穏な空気が増幅されていく様は、カラッとした青空が広がっていながらも、どこか寒々とした雰囲気が漂う景色との相乗効果で、まさに北欧スリラーの真骨頂と言えるもの。
そんな、休暇を過ごす光景が、結局何も大きなことが起こらないまま約一時間続き、正直退屈となりつつ、どこにオチがあるのだろうと感じ始めたところ、物語は急展開を見せ、その後は、あれよあれよという間に冒頭からは想像できないような結末を迎えることに。
これ以上はネタバレになってしまうので、あまり書くことはできないが、少なからず目を背けたくなるようなシーンが終盤に凝縮されているため、苦手な方は要注意。
また、原題である『Gæsterne』が「客」、英題である『Speak No Evil』が「見ざる言わざる聞かざる」の「言わざる」、そして邦題が『胸騒ぎ』と、それぞれどれも悪くないものになっているのは素晴らしいなと感じた次第。
加えて、本作品はブラムハウス・プロダクションズによるハリウッド版のリメイク製作が決定しているようで、なおかつ主演がジェームズ・マカヴォイであるとのことであり、たまたま先日観たM・ナイト・シャマラン監督『ミスター・ガラス』の怪演が目に焼き付いているところであるため、これはもう期待大。
公式サイトにある「世界を震撼させた、想像を絶するラスト15分」のフレーズは伊達ではなく、そのタイトルどおり、観ている間も観終わった後も、終始胸騒ぎが止まらなかったとともに、入場特典でもらった海外版ミニポスターにおいて、アーベルの口がタイトルの文字にもなっているデザインが秀逸だなと思ったところであり、裏面にFilmarksとのタッグで限定オリジナルTシャツプレゼントとあったため、申し込もうと思ったらプレミアム会員限定ということでズッコケた怪作。

最近の人は地図も読めない。
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