"君が差し出したんだ"。
これは怖すぎる。観た後もずっと胸騒ぎ、というか動悸がおさまらない。思わず人間不信になってしまうわ。
設定や展開が恐ろしいのではない。もっと奥底のメッセージ性が胸糞悪くて底意地が悪くて、性悪説に基づいていて、ハネケやトリアーを引き合いに出すのもわかる。
現代を生きる我々は、立場や国籍、年齢や性別、自分と「異なる人」に対して理解を示し、寛容であるべきだと刷り込まれている。
自分が理解できないような相手の態度を目の当たりにした時、「自分が悪いのかもな」と省みるのが現代人の流儀。そうしたスタンスが美徳であると、映画を含めた様々なエンターテインメントに教えられて育ってきた。
そうした、いわゆる「リベラル」であるからこそ招いてしまう油断=人を信じすぎてしまうことの罪を描いた作品。
でも改めてそれは美徳であるべきなんだよな。だからこそ人を信じる心を全面的に否定し、他人を信じるなかれ、と説くような本作の展開は、心底の嫌悪感を催す。
「善き人」であることは素晴らしい、そんな前提を覆してくるような、最悪な作品。