けまろう

ザ・ホエールのけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

『ザ・ホエール』鑑賞。海外からの出張中で一本観られるならと選んだ作品。大傑作。ラストシーン涙が止まらず嗚咽を我慢してたら呼吸困難になりそうだった。美しくも切ない救いの物語。
彼氏アランの死を発端として暴飲暴食に陥り、肥満症で死期迫るゲイのチャーリー。大学のオンライン授業を通じて生活を続ける中で、彼の部屋に訪れる幾人かの登場人物。ハーマン・メルヴィルの傑作『白鯨』を引用しつつ物語が運ばれていく。チャーリーは白鯨を殺すことが救いになると信じているエイハブを引用し、自ら死に近づくように暴飲暴食。白鯨とはまさに肥え太った白人のチャーリーであり、彼自身が自死(白鯨殺し)することで自らに平穏が訪れると信じている。そこに偶然訪れる宣教師のトーマス。彼はキリスト教のカルトであるニューライフを信奉し、チャーリーに精神的な救済を与えようとする。一方、肉体的な救済を図ろうとするのが、アランの妹である看護師のリズだ。三者三様の救いへの想いが絡み合い、最終的に訪れる救いの形に涙が止まらない。
チャーリー自身、ゲイであり、妻と娘を捨てて男を求め、最終的に醜い姿となる自己肯定感のない男。オンライン授業の黒い画面が自己否定を象徴する。そして、自己否定感から最期に良いことをしたいと、10年近く顔を合わせていない娘にできる償いに奔走する。結果として自らの救いにもなる娘エリーに後光が指す神的演出の得も言われぬ美しさと言ったらもう……
今年あんまり作品は観られないと思うけど間違いなくベスト。
けまろう

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