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ザ・ホエールのエスのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.4
”考えたことある?
どんな人であれ、誰かを気にせずにはいられないということ。”

自他共に赦すこと、手放すということ。
一度ぼろぼろになった自尊心はどう育めるのか。

上映館が少ないのが本当に勿体ないと思った今作。最後のシーンの美しさ、開いた口が暫く塞がらなかったです。これ書くのにも物凄く時間がかかった。

正直に文字を書くこと、伝えること。
其の場しのぎのお世辞や励ましは、いずれボロが出る。
相手を傷付けてしまうことは避けられないだろうけど、自分たちには言葉を使って、謝意を表し、歩み寄ることが出来る。本当に気にかけていれば。
相手の為であれど、本心じゃなければそれは無意味なんだなとつくづく感じさせられました。

そして、過食というセルフネグレクト。
みているのが本当に苦しかった。辛かった。食べることで得られる脳の喜びに縋るしかないという極限の状態、”続ければ続けるほど孤立を生む悲しい祝祭”とも言われており自己処罰の位置付けでもあるんだとか。自分の中ではそれは間違っていると解っていて、こんなはずじゃなかったと思って生きることがこの世で一番辛いことだと思っているのでしんどかった。その辛さをしっかり描き切るのは簡単な事じゃないと思う。

ブレイダンフレイザー、おかえりなさい。またスクリーンでみれて本当に嬉しい。大好きなセイディシンクもホンチャウも素晴らしい演技で、アカデミー助演女優賞に対する疑問が更に高まりました。

”救う”とは。今作でもなかなか驚きだった宗教の真っ向否定。神はいないってもう言っていいんだなって。

自責の念で頭がいっぱいの現代人に、相手に寄り添い、お互いに手を取り合ってというメッセージをA24は沢山の作品を通して届けていると思う。これからも追っかけたい。
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