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ブリグズビー・ベアのエスのレビュー・感想・評価

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
5.0
いや〜良い……………本当に複雑で唯一無二。脚本が凄まじすぎです。思った以上に刺さっちゃってびっくりしちゃってます………

25年間誘拐されて、外気から完全にシャットダウンされたシェルターで犯人夫婦を親だと思いながら幸せに暮らしていたジェームズの成長録。ブリグズビーベアという教育番組が生活の中心であった彼は、救出された外の世界でもうみれないと事実を突きつけられ、困惑する。流石に25年間慣れ親しんだ存在は絶対に直ぐに忘れることなんて出来ないし、外の素敵な世界がどうだかは彼にとっては関係ない。彼はあの中で衣食住や娯楽、全てにおいて困ったことは何一つなかったという立場が誘拐/監禁を扱った他作品とはまた違くて。ただ、環境の産物にしがみつく訳にもいかない。その大切な思い出との折り合いの付け方が映画だったのがたまらなく好きでした。

彼の持つ世間の荒波に呑まれてない純粋さが、外にいた大人たちを童心に還らせて、忘れていたなにかを思い出させるの素敵すぎてたし、シンプルに世界を全く知らないからこそのこの無垢さと特有の気まずさがたまらなくツボで、申し訳なくなるんだけど愛おしくなっちゃいました。心をくすぐられてるような気分。笑

誘拐っていうなかなかのテーマにも関わらず、露骨なヴィランを作らないところが、とてつもない歯痒さを引き立たせている。ヘイトも存在してなかった。みんな愛に満ち溢れていて、稀に見るこのやさしいせかい。あのモノローグの心の掴まれ方、マークハミルが本当に適役。

映画をつくる映画として、輝きに満ち満ちているのですが、込められたメッセージがどれも温かくて。それもそのはず、大好きなアンディサムバーグを筆頭としたロンリーアイランド製作、フィルロードにクリストファーミラーコンビも携わってます。これは外れる訳がなかったです。

コメディなのにとてつもない切なさを観る者の胸に残してく本当に秀逸な作品。映画が好きなら絶対に好きです。是非。
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