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ザ・ホエールのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
3.5
サミュエル・D・ハンターの舞台劇の映画化。
男に走り妻と娘を捨て男が、過食症で死期を悟り、8年振りに娘と再会して関係を修復しようとする5日間(月曜日から金曜日まで)を描いたヒューマン・ドラマ。
監督は「ブラック・スワン」のダーレン・アロノフスキー。
ブレンダン・フレイザーが特殊メイクで体重272kgの主人公を演じて話題に。
原題:The Whale  (2023)

~登場人物~
・チャーリー(ブレンダン・フレイザー):主人公。8年前、恋人アランのため妻と8歳の娘を捨てる。アランの死後過食症になり、現在の体重は272kg。大学のオンライン講座で、ウェブカメラを常にオフにしてエッセイの書き方について教えている。うっ血性心不全。月曜日の血圧は238ー134。余命が幾ばくもないと知りながら、治療費がないとして病院へ行くのを拒む。
・元妻メアリー(サマンサ・モートン):エリーの母。
・娘エリー(セイディー・シンク) : 17歳。自分を捨てたチャーリーを憎んでいる。邪悪な心を持つ。人の行動をスマホで撮影する。
・子どもの頃のエリー(ジェシー・シンク)
・リズ(ホン・チャウ) :看護師。チャーリーの唯一の友人。兄は終末論を唱える新興キリスト教(ニュー・ライフ)の宣教師だった。ニュー・ライフを嫌悪している。
・トーマス(タイ・シンプキンス) 10代。ニュー・ライフの宣教師。実は…。
・ダン(サティア・スリードハラン) : ピザの配達人。

・ハーマン・メルヴィル「白鯨」
・ホイットマンの詩「ぼく自身の歌」
・肉欲
・ウソと正直
・邪悪と救済

「大事なのは、生徒が書いた正直な言葉だけだ」

「正直に書け」
Just write something honest.”

「人は誰かを救うことはできない」

フレイザー、シンク、チャウの3人が好演。
フレイザーの部屋だけで展開される密室劇。
登場人物の会話の中で少しづつ人物の関係や過去が明かされるミステリー仕立てになっている。
テーマは邪悪と救済など宗教色を伴なう。
心の奥底にある自分の心、それが邪悪な心であっても、正直にそれに従ってよいのか?
(邪悪な動機で行ったことが結果的に他人を救済することもあり、反対に良かれと思って行う行為が災いをもたらすこともあるが、ケース・バイ・ケース)
なお、メルヴィルの「白鯨」をかつて読んだ時、白鯨に異常なまでの復讐心を燃やすエイハブ船長が白鯨と対決する壮絶な闘いを描いた冒険小説だと思い込んでいたので(なかなか闘いの場面がやって来ない)、消化できなかった。実は宗教をバックにした難解な書物だった。
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