Jun潤

ビリーバーズのJun潤のレビュー・感想・評価

ビリーバーズ(2022年製作の映画)
4.1
2022.07.13

磯村勇斗がついに映画初主演。
そしてその監督こそアノ城定秀夫。
あらすじと予告からすると孤島を舞台とし、新興宗教団体を背景に置いて、極限状況の人間の業を描いていそうな雰囲気に、それまでの平均的つよつよビジュアルから一転した髭スタイルの磯村勇斗がどう動くのか、もしかしたら2022年ベストに食い込むのかもしれない、そんな期待も込めて。

新興宗教団体「ニコニコ人生センター」が実施している「孤島プログラム」に参加者の“オペレーター”、“議長”、“副議長”の3人。
“本部”からの物資の供給が不安定ながら、“先生”か目指す夢と現実の融合に向けて、その日見た夢の報告や瞑想などを続ける日々を過ごしていた。
しかし、飢餓の苦痛、逃れられない性欲、夢と現実の混同、外界からの侵入者、“本部”の実態が、彼らの日常を崩壊させていくー。

ピンク映画の巨匠・城定秀夫が放つジャパニーズ・スプラッター・スリラー!!
人間が抱える業の深さをわずか3人のメインキャラクターと絶海の孤島という舞台を使って克明に描き出す衝撃作品。
官能で魅惑的に描かれる性描写が、磯村勇斗北村優衣宇野祥平の放つ好演、怪演、大狂演を鮮やかに光輝かす!!!

内容やテーマ性というと、言ってしまえば実力派の監督と俳優がお届けする豪華版アダルトビデオといった感じで、新興宗教って危ないね怖いね、な軽めなメッセージのみでキャラクターの背景は匂わせる程度。
しかしそれなのに、いえだからこそ、人間が持つ原点にして頂点の欲望が聳り立つ。
最初はただ食べたかった、そして夢で過去の出来事を追想し、それが現実に性欲の悪魔となって顕現する。

演出、というか映像作品としての画面映えが素晴らしく良かったですね。
ただご飯を食べる、瞑想をする、日々の作業をする、それを繰り返すだけだったはずなのに、雨で濡れたTシャツから浮き出た乳首が妙に官能的に見える。
脚を触る、Gパンが短くなる、服を脱ぐ、キスをするその行為の積み重ねが、していることは単なるAVなのに、キャラクターを、ストーリーを、濃厚に伝えてくる。

演技もまた凄まじかったですね。
個人的には特に磯村勇斗と宇野祥平。
磯村勇斗は仮面ライダー、朝ドラ、大河ときてまさかのR15+映画で初主演。
大丈夫なのかと感じさせる暇もなく、まだまだ若々しい魅力でもって純粋に“先生”を盲信する様、その行動への狂気を感じさせ、未熟かつそもそも男だからこその性的な対象への欲求を発散する行動には不快感をブッちぎってよくやった!感を孕んでいました。

宇野祥平もまぁよかったぁ〜。
この人含めバイプレイヤーの名演を上手く扱えるかどうかが一流の監督かどうかを決めるまでありそうですね。
“議長”として、最年長者として他の2人を先導しつつ、若い2人が持つ欲求の抑え方を間違えて逆に“扇動”してしまう。
“先生”に対して2人が不満を漏らそうものならそれまでの演技を全てリセットした完全な“無”の表情すら見せる。
縛られながら口淫されるのを“オペレーター”に応援させるのはシュール過ぎて無理ですって。

夢と現実が融合した先では、夢ではリセットできるものが現実ではリセットできない、目の前で起きたことが現実なのか、夢に現実で失ってしまったものを求めているのか。
作品的にも夢と現実が混ざり合っていましたが、夢なのかそうでないのかだけでなく、3人の行く末についても妄想の余地が残されていて好印象です。
Jun潤

Jun潤