Jun潤

無名のJun潤のレビュー・感想・評価

無名(2023年製作の映画)
3.9
2024.05.23

予告を見て気になった作品。
トニー・レオンがまぁカッコよくて、どうしても観たかったので公開日から日が空いてしまいましたがようやく鑑賞です。

1941年、日本が真珠湾を攻撃し、日本の傀儡である汪兆銘政権が支配する上海。
帝国陸軍、国民党政府、中国共産党の謀略が交錯し、名も無きスパイ達は水面下で闘いを繰り広げる。

ふおお、なるほどなるほど、、。
時系列をシャッフルさせつつも、序盤で写した場面を後にそのまま回収していて、観ていくほどに段々理解が深まっていく作品。
誰が味方で誰が敵なのか、ハラハラするというよりも今作の場合、誰に、どの国側に主人公としての視点を置くかによって、スッキリもモヤモヤもする作品でした。
結末だけ切り取るとプロパガンダ的な思惑にハマりそうで、そういう意味では危うい作品でもあります。

個人的には、今となっては戦勝国が歴史を作り、過去のifを取り上げてもどうにもならないと思っているので、フーとイエの2人のスパイが、それぞれに愛する人を守るため、守れなかったことによる自責とさらに強まった職責のために闘い続ける様が印象に残りました。
序盤は暗躍し続けるフーと、バディと共にコメディリリーフ的な場面を提供してくれたイエの姿でメリハリを効かせてくれていました。
しかし共産主義のイエの恋人が殺され、フーの真の思惑が明らかになってくると、純粋な男同士の闘いに急速にシフトしていく。
あんなにも泥臭いステゴロアクションを魅せてくれた2人が実は同じ側だったという、どちらも戦時中のスパイという職業に囚われた哀れな者同士というのもまた、戦争の悲惨さ、異常さを伝えてきてくれていた気がします。

戦争当時の帝国陸軍にあった驕り、それは日本国内やアメリカに対するものだけでなく、戦後の満州においても、その驕りによって結局手放すことになってしまったというのはまた、日本側の視点で観ると残当というか、良く言えばビターエンドな感じでしたね……。
Jun潤

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