Saori

ハッチング―孵化―のSaoriのレビュー・感想・評価

ハッチング―孵化―(2022年製作の映画)
4.0
途中何度か顔を覆いました。

思春期の娘、自我の芽生え、反抗期、精神的自立のプロセスが順を追って失敗していく様がホラー仕立てになっています。

自分で自分を慰める場面は切なく感動的でした。

感情というものをどう扱ったらいいか。
学校では教えてくれませんよね。
どちらかと言うとルールが先。
折り合うこと、諦めることといった抑圧を余儀なく学んでいく。

家庭で感情の扱いを学ぶことができなかったら‥恐ろしいことです。

私は子供たちの気持ちを受け止めているだろうか。そんな視点でも観てしまいました。

キスやハグがあっても、心が触れ合っていない。こころが触れ合うには、どうすればいいのでしょう。

母子で仲良く一緒にいる場面がしばしば出てきましたが、母は彼女の考えていることや気持ちに全く興味がないように見えます。質問しても、答えを待たずに自分の答えを押し付ける。娘が辛そうにしている時も、娘自身がどうしたいか問う前に、決めて従わせてしまう。

あなたは今どういう気持ち?
と投げかけ、待つ姿勢が見られなかった気がします。

結果彼女は自分の気持ちを吐き出す場所がなく、悲しみも苦しみも全て、卵の中に込めたのです。卵から孵化した自分との対話も叶いませんでした。ただリンクして感じ合うだけの気持ちと心、一方的に話しかけるだけ。

私たちはいつも何かを感じている。
感じないように努力することもあるほど、感じてしまう。

対話の必要性、対話の持つ力の可能性を改めて感じさせられた映画でした
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