中国の獅子舞についての知識が全くなく、獅子舞大会の演目、ルール、審査基準がどうなっているのかが分からずじまいでした。
それでも、獅子舞という芸能の難しさや魅力には瞠目させられました。しかし獅子舞を極めてもそれだけでは生活できない。あれほどの情熱や技術や才能が報われないのは、どうにかならないのかなあと思う。獅子舞はどうやらプロスポーツ的なものの反対側にあるらしく、芸能だけでは食っていけないのはどの国でもある程度はそうでしょうが、獅子舞は超絶な運動能力や鍛練を必要とする芸能なのに、それだけやっているわけにもいかないらしい。
主人公の師匠は生活のために獅子舞を諦めた人。主人公に獅子頭をくれた少女も「女」だという理由で獅子舞を辞めさせられる。そして主人公も家族を背負って働かなければならず獅子舞どころではなくなってしまう。
そういう「諦め」を強いられている登場人物それぞれが獅子舞とどう向き合っていくのかを細やかで美しいアニメーションで描いていて、初めて観た中国ＣＧアニメのレベルの高い描写力には驚きました。獅子の毛の動き、水滴の流れ、空の色など、難しい表現をサラッとやっている芸術性の高さはすごいです。
ストーリー展開はスポ根ものの定型という感じは否めないですが、ところどころに現代中国（北京オリンピックあたり？）の社会問題が描写されていて、単なる痛快ヒーロー物語ではない。特に、労働者が人権を奪われ酷使されていることの重さには考えさせられました。中国において政府批判をすることが難しいことを思うと、ここまで踏み込んで描いていることの勇気に驚きました。
この作品を単なるスポ根もの、青春ものと切り捨てることはできないと思います。少し苦いラストも味わい深いです。
