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グッド・ナースのRenのレビュー・感想・評価

グッド・ナース(2022年製作の映画)
2.5
流血も発砲も全力疾走も無い、真綿でじわじわと首を絞めるように進行する静謐なサスペンス。心から恐ろしい話だとは思ったけれど、劇映画としてはそこまでかな〜....と思ってしまった。

全編を通してかなり暗い(視覚的に)ので、なるべく大きい画面か暗所での鑑賞をおすすめ。全シーン、夜か室内か曇りのどれか。
今作について感じたのが、この手のサスペンスにありがちな雨のシーンが無いこと。雨音さえ封じられた平坦さが、より日常に侵食してくる不穏さを煽る演出となっていた。犯人にとっては日常。その他大勢にとっては日常の水面下で何かが壊れていっている恐怖。

命を救うはずの病院で行われ続けた連続殺人。一般人を欺くかのように点滴と薬品を使用した周到な殺人の前では、被害者は疑惑を抱かずに死を受け入れるしかない。さらにそのような不審な事実を、組織が隠蔽するという地獄。
「病院」というある意味でのブラックボックス。鑑賞前と後で「病院」を見る目が少しでも変わってしまうような映画だったし、そこを狙った映画ではないかと思う。「生」を強烈に願う人々が集う駆け込み寺のような場所でありながら、ほぼ同数「死」も漂う場所。正義・慈善的でありながら、信用問題・ビジネスによって支えられている場所。少なからず抱いていた「そこに行けば大丈夫だ、そこにいる人達は天使のような心を持っている」という患者側の驕りみたいなものが、悪くも、そしてもちろん良い意味でも ぐらつく作品だった。

以下苦言。
長い。個人的にずーっと暗い映画があまり得意でないのもあって疲れたし、この人は殺人犯か否か?でやり通すならもっと起伏が欲しかった。身も蓋も無いかもしれませんが、例えば『罪の声』のように、実在の事件からは構想だけを拝借してもっと大胆に脚色を加えても良かったとさえ思った。
終盤の某シーン、明らかに異様な雰囲気を醸し出すエディ・レッドメインの演技にはアガったけれど、結末でまた火がしゅんと消えてしまったような。ドキュメンタリー映画や『殺人の追憶』『ゾディアック』のような未解決事件映画ではないので、「何もありませんでした」はエンタメになりづらい。だったらいっそその空白を創意工夫で埋めてほしい。それがフィクションの良さではないでしょうか....。

それから、主演二人以外がいくらなんでも脇役すぎる気がした。『羊たちの沈黙』くらい主演がガツンと前に出てくるのならまだ意味は分かるのですが今作はあれほど熱量もテンションも高くないので、脇をもっと魅力的に仕上げて魅せるべき。ただでさえ気合入れて観るのは疲れるタイプの作品だったのだから(主観)、ジェシカ・チャステインとエディ・レッドメインのどちらも出ていないシーンではそりゃ集中切れるよ....。

今回の自分の敗因は、
○ 疲れた一日の夜に観てしまった。
○ ジェシカ・チャステインにもエディ・レッドメインにも特に思い入れがない(そもそも自分は、好きな俳優こそいるけど推しと捉える感覚は無いので、この人が観られたから満足!みたいな映画感想にあまり共感できない)。
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