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カリガリ博士のEegikのネタバレレビュー・内容・結末

カリガリ博士(1920年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

人生初・サイレント

サイレントってチャップリンの身振り手振りで伝えるスラップスティック劇(観たことない)のイメージがあったけど、普通に台詞や状況説明の多くを画面いっぱいの活字表示に頼っているんだ……というのがいちばん驚いた。映画というよりノベルゲーム(エロゲとか)をオート機能で読んでいるときに似た体験だった。「映画なんだから文字に頼らずなるべく映像で見せろよ!」という批判はさすがに時代錯誤すぎるけど、きついもんはしゃーない。
でも、終盤で「カリガリ カリガリ……」と、活字じゃなくて通常の映像のなかに文字が描き込まれる精神病的シーンは、これまでの活字演出をふりにしている感じで迫力があって良かった。

正直あんまり集中できなくて別のことを考えながら観ていたのでストーリーはよく分かってない。小説とかで読んだらそこそこ面白そうなサイコホラーっぽかった。あっ、そんな現代的な(?)どんでん返しやるんだ、とはなった。現代的というか、いつの世も「じつは今までのはぜ~んぶ精神異常者の妄想でした」という夢オチ展開は安直に作られるんだなぁ~、と。

夢遊病的な表現なのか、家が斜めってたり変なサイケ模様が大きく描かれていたりと、舞台セットがかなりヘンテコな感じで良さげだったんだけど、なにしろ白黒でしかも画質・フィルムの荒さがあるからその良さをあんまり味わえなくて残念だった。もっと高画質のカラーで見せてくれ!と思っちゃう。

あと、今や「古い映画っぽさ」のアイコンとしてアニメ等のオチでもたまに使われることのある、カメラのレンズが絞られるように黒い円形状に映像がキュッと制限されるあの演出(うまく言葉で表せられない)の本来の姿を初めて観た。黒い円周がくっきりしてるんじゃなくてグラデーション的にぼやけていて、しかも収縮のスピードもおっそいというか、そもそも使い方が全然ちゃうんだな~と学んだ。

・wikipedia引用
"アイリスショットの多用:カメラに絞りをつけて撮影するショットをアイリスショットという。初期映画では、場面場面のつなぎを、特定の人物に絞りをつけて閉め(アイリス・アウト)、次の場面において、また人物に絞りをつけて開け(アイリス・イン)場面を切り替える方法が使用されていたが、本作品では、場面の切り替え以外でもアイリス・ショットを多用し、不安感をあおったり、注意を喚起したりする手法が多用されている。"
アイリスショットっていうのか。なるほど。あと、やっぱり本作での使い方は当時としても異端だったのね。

あと、昔の映画ってフィルムの影響なのか人の動作が早送りのように機敏なイメージがあるけど、だからこそなのか、夢遊病だからなのか、この映画ではすげぇゆ~っくり歩く人・シーンが多くて、ドタバタシーンとのメリハリがすごくついていた。
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