Ren

カリガリ博士のRenのレビュー・感想・評価

カリガリ博士(1920年製作の映画)
3.5
100年以上昔の作品で、確かに観辛さなどもあるけどちゃんと面白い。世界最古のホラーらしいが真偽は不明。多分自分が観た中で最古の長編映画になった。

未来を見通す夢遊病者から死の宣告を受けた男がその晩何者かに殺される。謎の預言者とその主人、連続殺人の顛末を追うホラーミステリ。『羊たちの沈黙』も今作のフォロワーなのかな、と思ったりした。
冒頭から「信頼できない語り手」要素全開。今ではジャンル化したと言っていいモチーフだが、その礎として堂々たる出来栄えだった。

特筆すべきは、ぐにゃぐにゃと曲線ばかりで構成された町と家のセット。世界そのものの信頼できなさ、自身の認識が歪んでいくさまが殆どのシーンに視覚情報として現れる。
そして明らかにやり過ぎなカリガリ博士とツェザーレのメイクも面白い。2人だけが明らかにマンガっぽ過ぎて浮いている。アイリスショットの多用も、闇に取り残れていくような不安を常に感じさせてくれて秀逸だった。そういう感じで、一瞬一瞬に怪しさの演出が滾っている。サイレントかつ白黒映画だからという理由もあるだろうが、超不自然なまでのオーバー演技も味だ。

文字が宙に浮くように見せるフィルムの編集などもアイデア勝利で感心してしまった。こういう作品が歴史の始まりにあるからこそ今の名作群があるのだと思うとしみじみする。

ラストなど今なら予想できなくは無いオチだけど、やっぱり切れ味の鋭さが抜かり無い。最初から最後まで、こうきたか!な演出と展開が色々あって、エンタメと勉強の間で唸りつつも楽しんだ。
Ren

Ren