Jun潤

今夜、世界からこの恋が消えてものJun潤のレビュー・感想・評価

3.7
2022.08.02

道枝駿佑×福本莉子。
ジャニ主演のキラキラ恋愛映画。
あと福本莉子ちゃんは演技も上手いしなにより可愛い。
寝たら記憶を失ってしまうというアニメ的な設定の悲恋ものかと思いきや、もう一捻りありそうな感じの予告。
既に盤石の演技を見せる福本莉子と、可能性に溢れる道枝くんの化学反応に胸を膨らませ今回鑑賞です。

事故の後遺症で前向性健忘という、眠ったら記憶を失くしてしまう病を患った女性・日野真織。
部屋のメモに従い、パソコンの中にある日記を見ると、記憶を無くしてしまうこと、事故の日から昨日までの出来事、今日することが書かれていた。
しかしその日の真織は違っていて、昨日のことを覚えていた。
主治医に話を聞くと、病気が治りかけているとのこと。
部屋で見つけた古いスケッチブックに描かれた謎の男性、ぽっかり空いてしまった記憶の事実を求め、症状のことをよく知る親友の泉を訪ねる。
真織から話を聞き、帰宅した泉の部屋には、真織の部屋のメモと同じことが書かれた日記帳があった。
その日記を開き、空白の記憶、そして神谷透のことを追想するー。

三木孝浩×月川翔の奇跡的化学反応!!〜若干三木監督の手癖を残して〜
三木監督が引き出す演者の表情と、月川脚本の語彙力の高さでもって、キャラの心情と展開の切なさをストレートに伝えてくる構成。
監督の昔からの癖なのか、セリフの応酬になると少し間の悪さが際立ちますが、表情がいいものだからセリフのないシーンの見応えは十分。
あとは『ぼくは明日、昨日のきみとデートする。』『フォルトゥナの瞳』でもありましたが、クセの強い設定の作品の場合、設定の下拵えが長い。
しかし下拵えが終われば、三木監督節全開のイチャイチャシーンに加えて、月川フィルターと個人的に呼んでいる淡い画面がキャラの表情を彩っていました。

お話としては昔のケータイ小説や今のなろうラノベに見られる記憶モノで、馴染みが深ければわかりやすいし、良くも悪くも導入が長いから腹落ちした上で見るとまぁ切ない恋の話。
何よりも演者が良かったですね。

良かった順に言うとまずは福本莉子。
今作の主軸である残らない記憶と残る記録、頭で忘れていても体が覚えているということを、そのハッキリした表情に抑揚をつけて時に明るく、時に儚げに表現していました。
個人的には彼女が演じた今作の真織という女性は、自分のことを信じられる強い人なんだと感じました。
もし僕が今の状態で、突然昨日のことを忘れて自分の日記を読んだとしても、とても自分のことなんて信じられませんよ。笑
自分を信じられる強さを真織が持っていたからこそ、毎日新しいことを透とできる楽しさ、それを忘れてしまう悲しさ、毎朝絶望から始まっても、昨日の自分の感情を信じて、今日の自分を精一杯楽しむことができていたんだと思います。

次に古川琴音。
今ヒロインの友達役を演じさせたらトップ5には確実に食い込んでくるであろう女優。
まぁありがちで王道な、友達であるヒロインに言い寄ってくる男を睨みつけたり品定めしたりの、お話的には都合が良く、鑑賞する人の心情に一番寄り添う立ち位置のキャラ。
唯一真織の症状のことを知り、常に真織のために行動する、そして透とも行動を共にするにつれて、2人にとって大切な親友になっていく存在。
今作ではストーリーテラーを担い、泉の追想が現代に追いつくことで真織も改めて未来に進むことができた。
しかしその裏では、大切な人からもう1人の大切な人の記憶を消すという、真織にとっても自分にとっても、とても辛いことをしなければならない、重要で切ない動きをするいいキャラに仕上がっていました。

そして道枝駿佑。
まだまだセリフの言い方にはスキルアップの余地がありましたが、それにしても表情の仕上がりがとてもいい、あと体細すぎ。
彼の設定の唐突さや、え今?なタイミングでの家族の話など、詰め切れていないところがありましたが、序盤の行動や真織を想っての行動など、透が純粋に他人に対して優しい人間であることが伝わってきました。
思い返してみればそんな自己犠牲の精神と、病気で母を亡くした自分のことを俯瞰して見ることができる視野の広さがあったからこそ、真織との日々の大切さ、真織にとっての自分、そして未来のことを常に考えていたのですね。

“前向”性健忘にも含まれている、“前を向く”ということ。
過去を振り返って、失敗や後悔もあるけれど、それだけ大切な思い出も残っていて、そんな記憶と共に前を向いていく、記憶の儚さから逆説的に記憶の大切さを描いている作品。
Jun潤

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