わっしょい

NOPE/ノープのわっしょいのネタバレレビュー・内容・結末

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

普通に見ても面白い。ちゃんと観ると奥深い。

農場を経営する黒人兄妹が、UFOを動画に収めようとする物語。
前半はサブキャラの過去話だったり、UFOがあまり出てこなかったりと、物語が一本に繋がらない感じで、中々面白いとは思いにくい。
後半、UFOが本格的に出てくるようになってからは、緊張感があって一気に引き込まれる。
UFOが実は生き物だったいうのは、あまり無い設定な気がする。
モンスターとしてのUFOから感情・野性みたいなものが結構前面に感じられて、生々しい生物的な恐ろしさがあった。

ちゃんと観ると、やはり黒人の誇り的なところにテーマを感じる。
作中で、便利なものとして消費される黒人というのが所々に出てくる。
初めての動画の馬に乗る黒人や、テーマパーク長の子役時代の同僚黒人等、消費だけされて名前の残らない黒人たち。
主人公の兄妹も、馬の安全講習ビデオ撮影に借り出された時に馬共々雑に扱われており、ちゃんと人として見られていないような居心地の悪さを感じさせられる。

UFOに目を合わせなければ攻撃してこないと分かってからも撮影を続けるというくだりは、自分たちが住み続けてきた土地を渡してなるものかというプライドを感じる。
UFOを打倒・撮影した後のエメラルドのセリフからも、「誰にも縛られないぞ」という誇り高さを感じた。

また、一見突飛なチンパンジーのコメディ番組の事故も、映画全編の縮図になっていた。
見せ物として消費されるチンパンジーと黒人、目を合わせてはならない怪物としてのチンパンジーとUFO等、本編にリンクする要素が散りばめられていた。

他にも、AKIRAのバイクのスライドブレーキのシーンや、使徒っぽく変形するUFO等、日本の作品のオマージュがたくさんあったのも面白かった。
自分が特に何をしたという訳ではないのに、日本人として誇らしい気持ちになった。

一番好きなセリフは、撮影作戦を立てる時のエンジェルのセリフ。
「この行動は、金や名誉の為だけでなく、誰かの為になることなのか」というところ。
この映画そのものを指しているようで、心に残った。
わっしょい

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