わっしょい

帝一の國のわっしょいのレビュー・感想・評価

帝一の國(2017年製作の映画)
3.8
本質のようで本質でないようで本質。
コメディだけど風刺的にもみえる作品。

政界との結びつきが強い高校。
そこで巻き起こされる生徒会選挙。
それを面白おかしく描いた作品で、普通にコメディなんだけど、テーマ的にどうしても風刺的に思えてしまう。

コメディ作品にとやかく言うのも野暮だけど、良くも悪くも考えさせられる点が何点かあった。

まず、賄賂やスキャンダルみたいな裏工作だとか、派閥争いだとか。
そういった本質的じゃないところで勝負してるのがアホくさい。(コメディとして面白い部分ではある。)
主人公含めて皆そういう所で競っているし、悲しいかなそれが当たり前みたいな世界観。

一方で、この世界観だからこそ、竹内涼真演じる大鷹弾のカッコ良さが際立つ。
勉学において極めて優秀。
そして何より、忖度せずに自分の芯を持って行動する。
カッコ良すぎて途中から彼が主人公に見えた。

でも、実際の世の中には大鷹弾はいない。
評価を受けたい時、成果よりも政治的な立ち回りが重要なのが現実だと思う。
しかもここにおける「政治的」というのは、本来的な使い方じゃない。
ネットの辞典によると、政治とは、
「ある社会の対立や利害を調整して社会全体を統合するとともに、社会の意思決定を行い、これを実現する作用。」
のこと。
一方で現実では、「政治」という言葉は、本作で帝一たちがやっているように
「他者の利益を潰して、自分に有利な状況にする」
というニュアンスで使われていると思う。
つまり何が言いたいかというと、本来的な政治は失われていて、「政治=隠れて潰し合うこと」という新しい意味になりつつあるなと。
そして、本作はそれを体現しているなと思った。

あと、何よりも気になったことは、そもそも参政権を持っている人が限られていること。
ルーム長と副ルーム長という、選ばれた人間だけが参政権を持つ。
そしてそのルーム長は、学園への寄付額で決まる。
つまり、実家が太いかどうか。
これがめちゃくちゃ風刺的で良い。
政治どうこうなんてどうでも良いくらいに、この設定が大好き。

生徒会長になると政治家への道が確約されるという話だけれど、そのスタートラインが実家の太さ依存。
そして本人たちは、それを知らずか、あるいは知った上でか、権力争いに必死こいてる。
何ともアホくさいけど、それが現実だよなと思う。

実際、JTCで過ごしているとそれを実感する。
親が大企業の役員で、早い段階からずっと慶應みたいな人。
補助輪つけて大学のネームバリューを手に入れ、それなりのJTCに入社する。
そんな人が上手に「政治」をしているのを見ると、全てがアホくさくなる。
親ガチャなんて言葉が流行ったけれど、歳を重ねるほどにそれが事実と思わされる。

一方、この作品の世界観で良いと思ったのは、舞台が高校であるところ。
中高一貫ではあるけれど、大学まではない。
高校でTOPにならなければ、その先は自分で切り拓く必要がある。
現実でも、大学まで一貫かつ、ネームバリューを持つ学校は無くならないかなあ。
そうすればもう少し平等な世の中になる気がする。
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