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NOPE/ノープのLzのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.0
めちゃくちゃ不気味で最高だった。途中からその後の展開を直視して正面から向き合うのが嫌になるほどの厭さ、不快さ、恐ろしさ。
嵐の前の静けさがこんなにも絶望的に感じるのは久々だった。言葉通り、なす術もなく嫌でも静に持っていかれるのが冷や汗をかく恐ろしさで、直後目の当たりにする目一杯の光景や嫌でも耳に入る音が全て地獄そのものだった。

物体そのものから人の悲鳴が聞こえ続ける状態があまりにも恐ろしくて、意識がある状態で取り込まれたあの空間を見せられて本当に泣きそうになった。あまりに地獄すぎる。あの恐怖空間は、こういったSF的なホラーでしか作り出せない。

ゴーディの件はどう関係してくるのだろうと思っていたけど、色々読んでみるとジュープがあいつを呼び込もうとする行為に持っていく為の要素だったのかなという感じに捉えられた。人の手によってどうにもならない物から見た自分の存在意義、そしてそれに対する慢心、執着、欲望。それらが大人になってからも残り続け、結果あの事態を招くこととなった。ゴーディの暴走が直接あの不可思議な存在に結びついているのか、それも明確にはわからない。

実際ゴーディはあくまで人間が“知り得る”存在の動物で、アレは人間にとって“未知”の存在。けれど、知り得ていながらゴーディの暴走は止められなかった。人は支配できないものに怯えるが、支配できる希望が見えた瞬間に、恐怖よりも好奇心が強くなり、油断する。

その油断が凶と出るか吉と出るか、その命運を分けたのが、未知の存在に対してそれ相応の扱いをするかどうかだったのかなと思う。ジュープはゴーディという狂気に対面したにもかかわらず、無知、あるいは無垢のままで、恐怖そっちのけで好奇心を満たそうとした。それが大人になっても変わっていなかった、もしくはあの出来事が拍車を掛けたのか、結果的に身を滅ぼす要因となっていた。

キャッチコピーにある様に、あれらが全て“奇跡”の一種であるのなら、これほど納得いくことはない。
偶然にもあの牧場が標的になったこと、ジュープの自分本位な行い、それと変わらぬOJたちの欲望…全てがあの場で起きたのはただの“最悪の奇跡”であり、運命とはまた違うのだと思う。

後半のスリル満点で壮大な駆け引きがとても面白かった。本当にハラハラして鳥肌まで立って、最後は昂って何だか涙が出てしまった笑
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