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容疑者Xの献身のLzのレビュー・感想・評価

容疑者Xの献身(2008年製作の映画)
3.7
ガリレオシリーズはいつもコミカルさの中に不穏さが漂う雰囲気が唯一無二で魅力的だったけど、この映画は更に陰鬱で、独立しすぎている…。

純度百の自己犠牲がもたらすものは、いつだって破滅なんだと、痛いほど実感させられる。
どこかが欠けた状態では何も完成し得ないこの世界で、自己犠牲という最大の欠損は、最後には全てを崩してしまうほどの強大な欠片だった。この自己犠牲は最たる例で、何重もの苦しみによって構築された故、崩れた反動も凄まじかった。

堤真一が纏う退廃的で耽美な雰囲気があまりにもこの映画に合っていて、薄命的な美の権化とも言える松雪泰子との組み合わせがとにかく素晴らしかった。
死の香りを漂わす萎びた男と、か細く咲き続ける花の様な女の、報われない愛。二人の熱演が苦しくも美しかった。
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