ぽん

デュアルのぽんのネタバレレビュー・内容・結末

デュアル(2022年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

(ラストに言及しているので未見の方はお読みにならない方がいいと思います)

生命倫理もなにもあったもんじゃないトンデモSF。(悪くない)
ドッペルゲンガーものの亜種でしょうか。ある日、自分とソックリな人物が目の前に現れ、自分になり替わろうとする。アタシの居場所は?存在意義は?という恐怖を描いている。

この手のハナシの結論は大体が本人の妄想でしたー!に落ち着くのだけど、本作のドッペルは本人が本人の意思で制作したクローンなのでそういう心理劇にはならず。
余命わずかと宣告されたヒロインが遺族のためにクローンを作るが、突如、病気が完全寛解して存在がダブッちゃったっていうなんとも雑な展開が面白い。
しかもオリジナルとクローンが決闘してどっちが生き残るか決めるなんて近未来とは思えない野蛮なルールで。決戦は金曜日ならぬ1年後。

「ガンパウダー・ミルクシェイク」(2021)でキレッキレのアクションを魅せてくれたカレン・ギランが最初に出てきた時は妙にボヨンボヨンしてるなと思ったら、ここからギア入れて身体作って別人になっちゃうよっていうギャップ演出だったか。

クローンの方がオリジナルよりちょっとだけ程度がイイ?みたいな描写が面白い。恋人曰く、名前を呼ぶトーンが違うとか。え、そんなこと?
まぁ確かにヒロインのサラちゃんは暗い雰囲気で一緒にいると運気下がりそう。そんな彼女が一心不乱に自分改造に励んでるのを見てると、恋人を取られちゃった女子が見返したる!って頑張ってるみたいで可愛いし、でも磨いているのは殺しのテクニックなのでそのギャップもまた楽しい。

最後は決闘直前にクローンがオリジナルのサラを殺して本人になり替わってしまう。
サラになってみてクローンは思い知る。薄々分かってはいたけど恋人のピーターって思いやりのない自己中オトコだなーって。ママはママで子離れ出来てなくて娘に依存しまくりの毒親だし。車を運転しながら彼女はモーレツに悲しくなって涙がこみ上げてくる。

数日前、サラが運転する車の助手席に座っていた時のクローンは「車の運転なんて簡単そう、見てれば分かるわ」とかほざいてたけど、実際にやってみたらあちこちにぶつけまくって車体はボッコボコ。
サラという女の子の人生も実際にやってみたら自分自身が傷つきまくって、たぶんこのままではボッコボコになってしまうだろう。

車の中でハンドルを握りしめて泣いているクローンの姿は、オリジナルのサラが余命宣告されて泣いていたときとソックリなのだ。死んでしまう我が身を思って泣いていたオリジナル・サラと、生きている今の我が身がしんどくて泣いているクローン・サラ。
果たしてどっちが幸せなのかなーというアイロニックな物語だった。
ぽん

ぽん