滝井椎野

MEN 同じ顔の男たちの滝井椎野のレビュー・感想・評価

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)
3.7
なかなか難しい作品。
思っていた内容と結構違っていて、怖いというよりは気持ち悪い。特にラストの畳み掛けは、意味の分からなさも相まってどんな顔で観ればいいのか分からなかった。
結構カップルで来ていたお客が多かったが、どんな気持ちで劇場を後にしたのか気になるところである。

全体的に、宗教的な要素が散りばめられている本作であるが、一番大きなテーマは再生誕だろうか。
タイトルにもある『同じ顔の男たち』だが、男たちの顔が同じなのはタイトルも示す通り。それとは別に、個人的に主人公ハーパーの顔もまた、彼らの顔と似通っているように感じた。そう考えることで、村での一連の出来事は全て、ハーパーが己と向き合うということのメタファーであると考えることができる。そうして終盤、全裸男が飛ばした種子がハーパーに入り込んだことで、悪夢のような最後の畳み掛けへと突入するわけだが、男たち=ハーパー自身がマトリョーシカのように産まれては産まれてを繰り返す。そうして最後に産まれてきた夫と向き合い、「愛が欲しかった」という言葉を受け止めることで、ハーパーも産まれ直すことができたのではないだろうか。その証拠に、最後のハーパーの表情はなんとも晴れやかだった。

全体的に風景の美しさとは真反対の気持ち悪さに溢れており、良かった。良かったが、もう一度観ようとは思えない、怪作だった。
滝井椎野

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