かたゆき

ガール・ピクチャーのかたゆきのレビュー・感想・評価

ガール・ピクチャー(2022年製作の映画)
4.0
子供の頃から続けてきたフィギアスケートの大会を間近に控え、 寝る間も惜しんで練習に打ち込む高校生エマ。
良い結果が出せずプレッシャーに押しつぶされそうになっていた彼女はある日、気分転換にと訪れた友達のホームパーティーで〝その人〟に出逢ってしまうのだった。
魅惑的な目で自分を見つめてくる彼女の名は、ミンミ。
一瞬で恋に落ちたエマはそのまま2人でパーティーを抜け出し、一週間後には世界で一番幸せな恋人同士となっていた。
重圧も忘れ次第に心が癒されてゆくエマ。でも、練習ではますます失敗が増えてゆくのだった。
一方、恋人のミンミもまた誰も知らない家族の問題を抱えていて――。
そんな2人を暖かく見守る、ミンミの親友ロンコ。
恋愛やセックスに興味津々の彼女は、とにかく運命の出会いを求めて様々なパーティーに出かけてゆくのだが、空気の読めない自分の言動のせいでいつも失敗してばかり。
果たして3人の恋と青春の行方は?

そんなシンプルなストーリーに全編を彩るノリのいい音楽、そして色彩感覚豊かな映像と、一言で言うならこれまで幾度となく作られてきたセンス系リリカル映画の王道。
さすがにベタすぎて新味なさすぎじゃないとも思ったけど、主要登場人物であるこの3人の女の子たちがなんとも魅力的で大変グッド!
初めて付き合った恋人といつも一緒にいたい、私の人生の全て!なんて思ってしまう彼女たちの初々しさは、普遍的であるがゆえにやっぱり切ない。
その後、あんなに永遠だと信じていた2人も次第に擦れ違ってゆく。
ここら辺の心理描写もかなり繊細で、この哀しみはどんな性自認を持った人でも関係ないというメッセージにもいたく共感。

とは言え、やはりシンプル過ぎてこれまでさんざん作られてきた百合萌え映画と何が違うねんと言われると弱いところ。
でも、本作の新しいところはそんな2人の親友であるロンコの存在にある。
恋愛にもセックスにも物凄く興味があるのに、頭でっかちになり過ぎていつも失敗してしまう彼女。
そんな彼女の前に運命の出会いかも知れない男の子が現れる。
でも、結局上手くいかなくて、最後、彼女は自分がアセクシャルかもしれないことに気づく。
正直、エマとミンミの2人だけの物語として完結していたら、自分もよくある百合映画として特に印象に残らなかったかも知れない。
でも、そんな彼女の存在が物語に違う深みを与えている。
ピンクを多用したフルーツパーラーでちょこんと座る2人の女の子や夜の公園でダンスを踊る少女たちというキュートな画も良いセンスしている。
この監督の感性の豊かさには要注目ですね。

最後、それぞれの道を歩みだした3人が笑顔で語らうパーティーのシーンも心地良い余韻を残してくれます。
うん、良質のガールズピクチャーでありました。
このそのまんまの超ダサい邦題以外は!
かたゆき

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