うめまつ

イル・ポスティーノのうめまつのレビュー・感想・評価

イル・ポスティーノ(1994年製作の映画)
4.8
この聖なる光に包まれた映画を守りたいと思った。こんなに美しく無垢で慈愛に満ちた物語を壊したくない。この透明で清らかな泉を穢したくない。この作品が持つ優しさをさらに優しい繭で何重にも包んで保護したい。いつか私がベイマックスになった暁には毎晩抱きしめて眠りたい。そんな気持ちになった。でもこの作品は100年経っても色褪せない強さを持っている、とも同時に思う。

想像よりずっと素朴であたたかい物語で、世界名作劇場の実写版を見ているみたいだった。貧しくも長閑な海辺の田舎町で、詩を介して育まれる友情をじっくり描いている。何も意外なことは起こらない。でもその不器用なくらいの真っ直ぐさがやけに胸に迫るのだ。マリオが贈ろうとした「この島の美しさ」があまりにも素敵で眩しくて目を細めた。木々を撫でる風のように、寄せては返す波のように、夜空に瞬く星のように、ただそこにあるだけで詩は言葉は物語は私たちを癒す。これから「隠喩」という言葉を見聞きする度にほっこりしちゃうだろうな。大好き。
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